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2019年3月25日 (月)

福島での里山暮らしが一転… 松久雅敏さん

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福島県都路町の山林に手を入れ、きのこ栽培や養蜂など、人と自然が寄り添っていた時代の暮らし方を実践してきた松久雅敏さんにお話を伺ったのは、2012年のはじめ。震災からまもなく1年という頃でした。松久さんの戦いは、今も続いています。



13年前から始めた
福島の山での自然な暮らしが…。

 

 


その地の暮らしと結びついた
山の手入れを。

  30 代の頃から、週末を利用して通える距離で、地震が心配だったので活断層の少ない過疎地を探し、13年程前に伏流水が飲める阿武隈山地の都路村に辿りつきました。都路という地名の由来は「都に貢物を運んだ路」と言われているのですが、村人の間では「都落ち(みやこおぢ)」した人が住みついたという俗説のほうが通りがいいようです。
  活動を初めてからの数年間は、意気込みとは裏腹に敷地の手入れは進まず、戸惑うことばかりでしたが、たまたま新聞でグリーンセイバー検定を知り、講習会に参加したり、人との出会いを通して教えられたことが転機となりました。ここは炭焼きやシイタケの原木を採取するために年月をかけて育てられた山で、敷地には炭焼き釜の跡があり、放置されたクヌギ、コナラやサクラ類が更新しています。そのことが分かってくると、昔の人たちがしていたように手を入れ、炭焼き、きのこの原木採取、薪づくり、風呂の炊きつけなど、暮らしの仕組みと結びついた手入れの仕方がわかってきました。暮らしのあり方を見つめ直すうちに「食べ物とエネルギー」についても考えるようになりました。
  いつの間にか林間をフクロウが飛翔し、オオタカが上空を旋回し、サシバも見られるようになっていました。林床や手入れの行き届いたまわりの棚田の畦畔や菜の花畑、萱場でも、山野草、薬草、昆虫類、野生の動物と触れ合えるようになってきました。毎年繰り返される自然の営みと人のふれあいがあって、その土地での暮らしがあることで、人もそこに生息する生き物たちも生きているのだと実感する日々でした。


当たり前の暮らしが
突然、奪われて。

  そんな暮らしのあり方が昨年一変し、一年たった今も先の見えない閉塞感に包まれています。田村市都路町は、福島第一原発からほぼ20~30キロ圏内にあって緊急時準備避難区域に指定されたところです。3・11の大地震から一夜明けた夕方近く、敷地を降りると国道288号線は、浜通りから西へと逃げる車が列をなしていました。その後私たちも避難所生活に入り、2度目に移された船引町の西部工業団地には、原発立地の大熊町と都路町の住民が避難して来ています。出入口脇に貼り出された紙には無数の行方不明者名が書き込まれ、誰もが口を閉ざし、昼間も支給された2枚の毛布に包まっています。家族を亡くし、家も仕事も何もかも失くしたうえに、その土地に寄りそって生きて来た暮らしや人のつながりも絶たれたことで、地域の再生も絵空事でしかないような日々が待っているのです。



自然、暮らし、
エネルギーについて
考えていきたい。

  震災後、2か月を過ぎた頃から、町民の半数近くが様々な思いを抱いて戻って来ています。生活の足となるバスが運行し、町では人々が行き交い、普段と変わらない日常がそこにあるように見えます。しかし暮らしのために手を入れてきた自然の時間は止まり、田んぼは荒れ、カエルの鳴き声は途切れました。町民台長の3400人は2900人を切り、子供や若い女性の姿は見られなくなりました。家族が分断され、暮らしの糧となる自然との繋がりは途絶え、測定器の数値だけが変化していきます。その土地で営まれてきた、命と暮らしが寄り添うごく当たり前の日常が失われてしまったのです。
 今は、なぜこのようなことがおこったのかを問い直し、自然、暮らし、そしてエネルギーについて考え続けることで、どこかでこの現状から立て直す足場を見つけたいと思っています。

(2012年3月発行、聚レター120号より)


松久雅敏さんから、メッセージをいただきました。
  現在、仮設住宅に住んでおられた都路の地元住民は、子供を抱えた家族を除き、行き場のない高齢者の方々はほとんど戻って来ています。 少数ですが、子供を抱えた家族も戻って来ておられ、子供の遊ぶ姿が見られます。
  遊ぶ傍にあるモニタリングポスト(正確にはリアルタイム線量システム)の指示値は、0.2μSv/hですが、子 供たちが遊ぶ足元にはオオバコが見られます。 測ってみると、0.8μSv/hです。また、特定の樹木(杉、赤松等)の針葉樹に高い放射線が溜まることが認められます。 落葉広葉樹は、幾分線量は少ないようです。
  これまでの線量測定結果のデータから、草木、地衣類を含め、放射線を吸着しやすいものがあるように見受けら れます。 これは、除染業者や行政、森林組合、学者の一致した見解です。 例にもれず、私の山林敷地も1.0μSv/h以上のところが点在し、落葉広葉樹は、0.5~0.7μSv/hの線量数値が測定されています。
  今後、嫌がおうでも、人が手を入れなくなった山に生きる全ての生き物(人も含め)の暮らしの在り様を見届けることになります。 そのことは、私自身にも跳ね返ってきます。 これからの行く先を、人としての在り様を、様々なところから見つめていきたいと思っています。
  明日の朝に出発いたしまして、都路に1週間程滞在してきます。 今は、被災者集団訴訟の裁判を通して人との関わり等、様々なことを学ばせてせもらっているところです。
                                                    2015年1月9日

 

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