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2019年4月 5日 (金)

三輪フィールドリーダー 久保重明さん

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樹木・環境ネットワーク協会のフィールドである町田・三輪里山クラブでの新しい試みについて、リーダーの久保さんにお話を伺い、持続可能なシステムとして世界でも注目される「里山」の保全について考えてみました。

里山保全は今
 日々の暮らしに必要な水、薪や炭、きのこや山菜などを集落の近くにある山林から得ることで、植生が維持され、豊かな生態系が生まれる――古くから受け継がれてきた「里山」という自然の在り方、暮らし方は、人と自然が共生する持続可能なシステムとして、世界でも注目されています。
 そこで今回は、当協会のフィールドである町田・三輪里山クラブでの新しい試みを中心に、あらためて里山保全について考えてみたいと思います。

里山の荒廃と保護の難しさ。
 環境省自然環境局では、里山を「原生的な自然と都市との中間に位置し、集落とそれを取り巻く二次林、それらと混在する農地、ため池、草原などで構成される地域」と定義し、「特有の生物の生息・生育環境として、(中略)良好な景観、文化の伝承の観点からも重要な地域」と位置づけています。
しかし、産業構造の変化や高齢化にともない、手入れをされずに放置された荒れた里山は増加する一方。環境問題への関心は社会的に高まっていますが、身近な自然である里山は、その多くが私有地ということもあって、地域の財産としてみんなで守っていこうという意識の醸成が難しいという状況があります。

地元NPOからのSOS。
 樹木・環境ネットワーク協会では、現在、全国9ヵ所の里山で保全活動を続けています。そのひとつである東京都町田市の三輪・里山クラブでは、今年から、近隣で活動するNPO法人、農に学ぶ環境教育ネットワーク(以下「農に学ぶ」)との協働事業として、「寺家ふるさと村」に面した緑地の整備を始めました。きっかけは、スギやシラカシが「農に学ぶ」が管理する田んぼに影を落とすようになったのでなんとかしたいと、三輪の久保重明リーダーが相談をうけたこと。「農に学ぶ」の木村理事長と久保リーダーは町田市のワークショップ等で面識があり、聚の活動の様子もご存じだったようです。
作業の対象となるのは、田んぼに隣接した丘陵地。スギやヒノキを植樹し、薪炭林として利用されていた私有地で、利用されなくなってからは自然実生のカシやサクラなども含めた木々が密生し、林床にはササ、アズマネザサ、マダケが生い茂る暗い森になっていました。

ふたつのNPOの協働事業として。
 当初は「農に学ぶ」のメンバーが保全作業をするから指導してほしいという依頼でしたが、実際に緑地の状態を調べ、管理方針や具体的な作業について話し合ったり、実際の作業を見てもらった結果、「農に学ぶ」のメンバーには難しいからお願いしたいということに。当面の取り決めとして、2013年3月までの覚書を交わし、実作業は聚のメンバーをメインに、「農に学ぶ」のメンバーも参加して地ごしらえなどを手伝いながら、月3回の整備活動をおこなうことになりました。
 晴天に恵まれた10月20日(土)、取材にうかがうと、枝や葉が林床への光を遮っているヒノキの大木をチェーンソーで倒しているところでした。うっそうと茂っていたササ、アズマネザサ、マダケは取り除かれ、歩きやすくなっています。倒した木が田んぼに落ちる可能性がある斜面は、冬、田んぼの水を抜いて地面が固くなってから行なう予定とのこと。まだ整備をしていないエリアにも案内してもらいましたが、ササやアズマネザサをかきわけながら後を追っていっても、久保リーダーの姿を見失いそうになるほどの暗い森です。このような状況から数ヶ月で、一般の人が散策路と間違えて入ってくるほどの明るい森になったことに驚き、地道な作業を続けた皆さんの熱意に感銘を受けました。

人材の確保と周囲の理解が課題。
 取材当日は4名の参加でしたが、いつもは聚のメンバーが7、8名、「農に学ぶ」のメンバーが2、3名参加。取り決めでは今年度末までとなっていますが、その後も作業は継続する予定なので、安定した人材の確保も今後の課題です。久保リーダーも「経験に応じた作業ができますし、指導もしますので、里山保全に興味がある方はぜひ参加してください」とおっしゃっています。
 作業に対する周囲の理解を得ることも課題のひとつです。「切ることは悪いことだという先入観をもっている人がいて、なぜ切るんだとか、いろんなことを言われます。薪炭林に戻すために、生物多様性なども考えながらやっていると説明していますが。聚のフィールドでも、時々来て意見をいう人がいたのですが、1年ぐらいたった頃、オオムラサキの写真を撮りましたと教えてくれました。蝶が増えてきたことがわかって、安心したのではないでしょうか」。

三輪の里山を守りたい、という思い。
 6月19日に最初の顔合わせをし、7月から活動開始という迅速な対応ができた背景には、久保リーダーの三輪への思いがありました。「聚が活動を始めた時、三輪の緑地は全部で20.8haあると聞きました。聚の管理エリアは4.4haだから、残りの10数haはどこにあるのかと思っていたのですが、この話を聞いたとき、ここがそうだったのかと思い、これも我々の仕事だなと思ったので」と久保リーダー。「こういうところはいろんなNPOが仲良くやることが必要。陣取り合戦じゃないから、協力し、得意なところを活かしあって、三輪の里山全体をいい方向へもっていきたい。『農に学ぶ』の活動は田んぼがメインだけども、森の下草刈りなどもできるようになるし、協力しあって、三輪の里山全体を守る活動ができるようになればいいと思う」と話してくれました。
 自治体、企業、NPO、その他の活動主体が、それぞれの得意分野を活かして協働することが、さまざまな場面で求められています。三輪の試みはその良い例として、参考になるのではないでしょうか。

(2012年12月発行、聚レター123号より)

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