50歳になったらやりたいことをやろう 川端自人副理事長
デジタルの世界から植木職人へ。
コンピュータメーカーで、顧客の業務に合わせてカスタマイズしたシステムの使い方を教えたり、マニュアルを作ったりする仕事をしていました。リーダーとしてその部門を取り仕切ってたんですが、保険関係の会社の業務マニュアルを作るというプロジェクトを最後にやって、完成と同時にじゃあ、さようならって。50歳で早期退職です。その2年ぐらい前から、今の仕事はひとつの節目を迎えたという気がしたのと、次のことをやるには50歳で始めた方がいいんじゃないかという思いがあって、早期退職を考えていました。
もともと釣りが好きで、「山釣り」と称して、リュックにテントとビールと調味料を入れて、山奥に4、5日籠って魚を釣り歩くというのをよくやってました。あちこち行くうちに、山の中にいる心地良さとか新緑の美しさに感激したりして、植物に興味を持つようになっていたのかな。次に何をやろうかと考えたときに、自分にできそうで、緑に近い仕事といえば植木屋かなと。早期退職の希望を出して、「樹木医の資格をとってその道に進みます」といったら、上司はどう答えていいのかわからないような顔をしていましたけどね(笑)。
2月に退職して、4月から1年間、職業訓練校の造園コースに通って、その間にグリーンセイバーと森林インストラクターも取得。修了後はいくつかの造園会社に勤めて、最終的に聚の会員でもある植木職人の人に弟子入りして、5年間ぐらいついて回りました。60歳をすぎた頃にはひとりで仕事をするようになって、20軒から30軒ぐらいのお客さんを初夏と初冬に回るという、完全な季節労働ですが、そんなペースが今も続いています。
さまざまな現場で経験を重ねて。
グリーンセイバーを取得した翌年に、神奈川県にフィールドができるというので二宮に通い始め、3年たったところでリーダーの磯川さんに頼まれてバトンタッチ。その頃からフィールド会議とかグリーンセイバー検定の検討会とかで事務局に顔を出すようになっていました。澁澤さんが理事長、大垣さんが専務理事になられたときに、法人企業からだけでなくフィールド出身者も理事にしようということで、他の数名と一緒に就任。その頃から企業や自治体などからの協力依頼が増えたので、私も手助けするようになりました。海の森事業には立ち上げ時から10年以上、石井さんのサポートとして携わったり、長岡大学でのグリーンセイバー講座、嵐山やおぐらでの企業の森づくり、環境絵本などは、事務局から丸ごと仕事を下請けして担当するという形態を試したりしました。
退職したときに思い描いていたのは、サラリーマンじゃない仕事で、それなりに満足できるところまで行くということ。5年後には植木屋として毎年頼んでくれるお客さんもでき、念願だった樹木医資格も山本先生の樹医研修や、日大藤沢の造林研での研究生活動のおかげで取得。それを機に、何か人の役に立つことができればと思って、環境カウンセラーの資格をとったり、神奈川県の自然公園指導員をやったりしました。退職から10年たった頃には、植木屋の仕事と聚と、群馬の赤谷プロジェクトが主な活動の場になっていました。
「転職」がかなえてくれたこと。
赤谷プロジェクトは、赤谷川の源流域で自然保護と地域振興の両立をはかろうと、林野庁と自然保護協会と地元が一体となって始めたプロジェクトで、そこにサポーターという立場で参加。プロジェクトとしては、人工林を自然林に戻す、砂防堰堤の実験的な撤去、イヌワシの保護など、いろいろやってるんですが、個人的には本格的な炭焼きや木の実の豊凶調査など、いろいろ面白い経験ができました。その中で私が力を入れたのは、都会の親子に赤谷の森で田舎体験をしてもらおうという「赤谷の森学校」です。プロジェクトのテーマのひとつである地域振興を目的とした企画で、昨年まで5年間実施しました。場所が遠いなどの課題があり、今は休止していますが機会があれば継続させたいと思っています。
ゲームのドラゴンクエストに「転職」というイベントがあって、僧侶や商人や勇者といった役割を途中で変えられるんです。そうすると、経験値やエネルギーはガクッと減るんだけど、今までできなかったことができるようになる。僧侶だけでも勇者だけでもできないことが、「転職」でできるようになるという設定なんですが、自分は現実世界で経験したつもりです。昔の仕事仲間とのつきあいもありますが、聚のメンバーや造園関係の仲間も含めて、企業の外にもいい世界がいっぱいあるとつくづく感じてるから、早期退職してよかったし、今の状態に満足しています。
※川端副理事長のHP http://www.jugemusha.com/
(2018年6月発行、聚レター145号より)
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