活動日:7月23日
これはフィールド活動の一環として、
ミカン畑のミカンの木にあった「コガタスズメバチ」の巣を駆除した時の報告である。
(1)
スズメバチの巣の発見
7月20日(日曜日)にミカン畑の草刈を実施した。
6月末にも実施したのだが日当たりのよい個所は1ヶ月たたないうちに丈が伸びてきて、
特につる性の雑草(カラスウリ、ヒヨドリジョウゴ、クズ、キヅタなど)が
ミカンの枝や幹に這い登る。
刈払機で行うものの幹の近くは手鎌で丁寧に草を取るため、
木の下にしゃがみこんで行う。かなりきつい作業だ。
横に伸びている枝に頭をぶつけないようにヒョイと頭上を見上げると
枯れた草の塊のような物体を発見。
「ウワーァッ!!」・・・・・
小さいが見覚えのある物体だ・・・。
四つん這いで脱兎のように逃げたが、
心臓がドキドキ。汗(冷や汗か)もドッと流れてきたほどで、
びっくり仰天パニックで死んでしまいそうだった。
気持ちが少し落ち着いてきたので離れたところで改めて確認したところ
まだ小さいがあの文様から間違いない。「スズメバチ」の巣だ。

その日は草刈作業のやる気は失せてしまったのは言うまでもない。
まさか、自分に関係するミカンの木にあったのは驚いた。
(2)
駆除作戦
ミカン畑が立ち入り禁止になってしまうと今後の草刈や8月に行う摘果作業ができなくなる。
11月末の収穫さえおぼつかなくなる。
そこで、「駆除!」と結論をだしたが問題はそのやり方だ。
実は筆者は、昨年夏に「共存の森ネットワーク 関東」の活動
(千葉県市原市創造の森のフィールド)での参加のおり、
広場の茅葺屋根の四阿の梁にあった「コガタスズメバチ」の巣を駆除した経験がある。
学生たちの協力も得て高さ4mほどの梁によじ登って
殺虫スプレーを巣の穴の中に噴霧、駆除したのだ。
この時には、厚手の作業着、かつ厚手の雨合羽、皮の手袋。
頭部は安全帽をかぶりさらにナイロンの防虫ネットを
袋状にして被って肌を露出させない服装にした。
一方、それにしてもあの巣の1m近くを数回往復したし、
その際、出っ張っていて歩きにくかった枝をノコギリで切り落とす等の作業を行ったのだが、
襲ってこなかった。まさに「知らぬが仏」とはこのことだと変な感心をしたものだ。
何故だろうか??
考えてみるに、当日(20日)は当初晴れていたが、
急に太陽が陰ってきて時々小雨が降ってきた日だ。
蜂は雨が降る時の予知能力があるのだろうか。
むやみに外に出て羽を濡らしたら命にかかわると考えたのかもしれない。
たしか、千葉県の時も雨が降りそうな天気で蜂がおとなしかったことを思い出す。
コガタスズメバチの習性・性質かもしれぬ。
(3)
23日に駆除決行
事前に殺虫スプレーを2本購入した。
30秒ほど噴霧できる能力があるが不足して失敗したくないと考えて、
「2丁拳銃」型で突撃することとした。
闘う前の緊張感はだんだん増大する。
アドレナリンが分泌されてきたのか、着替えている時も心臓が高鳴り
少し興奮気味の自分がいる。
さらに用心のため雨合羽を2枚も着込んでいるから汗も噴き出してくる。
先の戦争においても若い学徒軍人や、
戦国時代の雑兵侍たちの突撃命令前の心理がわかったような気がした。
突入!!
はじめは7,8mのところでいったん様子を窺うが敵の動きは無い。
もう少し近づいて3,4mところまで行くと
巣の入口でずっとこちらを見ている一匹の蜂が見える。監視兵か?
突然、当方目がけて、スーッと飛んできた。速い。
あっという間に飛んできたので身構えたのだが筆者の上を抜けて飛んで行った。
襲ってきたのではなかった。
「今だッ!!」と、こちらも素早く走って行って巣に吹きかける。
しかし、スプレーの霧で巣の場所を見失う羽目に。
一旦ストップして退却した。
しかし、敵の動きを見ると大量の蜂が穴から出てくるような気配が全くない。
そこで再度、巣の位置と出入口の穴を再確認して突入。
今度は十分に穴の中に噴霧した。勝利!!
着替えから作戦完了まで意外にも約1時間も経過していた。疲れた!!
(4)戦い済んで
a)戦利品
少し離れて観察していたところ、数匹の蜂が「狩り」から帰ってきたのだろうか・・。
巣の異変に気が付き周囲をブンブン飛んでいる。
女王蜂の行方を捜しているのだろうか・・・・。
少し可哀想な気になってきた。
蜂達は数分飛んでいたがそのうちどこかに飛んで行ってしまったが、
あるいは、殺虫成分に触れて死んだのかもしれない。
女王蜂や家族を失ったはぐれ蜂は間もなく野垂れ死にするだろう。
筆者は安全な状況になったことを確信して、
巣球をミカンの枝ごと切りとり戦利品とした。
10cmほどのソフトボール大である。(下写真)
筆者は、暑さと殺虫スプレーのガスを吸い込んだせいか、
少し気分が悪くなってきたので早々に退散することとした。
が、蜂の同定のために死骸を持って帰ることとし、
木の下を捜したところ大きめの蜂が見つかったのでこれを袋に入れて持ち帰った。
b)蜂の同定
下のテラスで休憩がてら蜂を同定。
スマートフォンでスズメバチを検索して、巣の文様、顔の文様や色を比較した。
どうも巣球が小さいし、蜂も大人しいのでうすうす感じてはいたが、
「キイロスズメバチ」ではなく「コガタスズメバチ」であることが判明。
数年前、この畑に近く、大ケヤキの高い枝に「キイロスズメバチ」が
直径40cmほどの巣を作っていたが、その時は本当にビクビクしながら
下を通過していたものだ。
巣があったミカンの枝は直径5mm程度のものであったので、
これはそれほど大きな巣にはならないことを示していたのだ。
話が逸れるが、筆者は最近携帯電話をスマートフォンに替えた。
電車の中で各種検索できるし筆者の好きな演歌もyoutubeで視聴できる・・・。
それよりも何よりもこのようなフィールドであってもパソコンで検索するものと
同じ環境があることがこの上もなく嬉しい。
以前はスマホは金がかかるしマナーをわきまえない若者が多いので
苦々しく思っていたのだが、「使い方を誤らなければ何と便利な道具よ!」と、
諸手を挙げて賛成派に変わった自分がここにいる。
さて、話を戻そう。巣の中からも働き蜂の死骸が出てきたので、
回収してきた大きな蜂と比較したところ、
体長や太さに大きな差がありこれはどうも女王蜂であるようだ。
スズメバチといえば10mmほどのぶっとい針が衣服を貫通して到達させるとの
恐ろしいイメージでいたのだが、この女王蜂は3mmほどの小さい細い針が
尻から可愛く出ているだけであった。
(下左写真は女王蜂。下右写真は、左の一回り小さな働き蜂と比較すると大きさがわかる。)

c)巣の中の蜂の子(蛆虫)
スプレーガスで成虫たちは死んだが、中の蜂の子は効かないようだ。
元気よく蠢いている。(下写真)

なお、巣の外殻を取り去ってこの蠢いている様子を動画サイトyoutubeに投稿した。
https://www.youtube.com/user/isomidori/videosMVI 3662をどうぞ。
(筆者の投稿ネーム 「山シャイン」でも検索可能。
当ブログの次号「イベント;そうめん流し」と同じ。)

上写真のようにこの巣は一段だけの巣盤だったが蜂の子がたくさん成長中であった。
ほぼ成虫になる寸前のものから丸々太った幼虫まで64匹が数えられた。
まだ、ほかに卵の状態も数十個あった。
なお、この写真では女王蜂は十円玉の横の死骸。
その左横の成虫3匹の死骸は働き蜂である。
右上にある死骸はちょうど飛んできたので筆者に叩き落とされた「アシナガバチ」の
死骸である。比較してみると面白い。
(5)番外編 「オオスズメバチ」と「クロスズメバチ」
a)オオスズメバチの巣
昨年12月、当フィールドの竹林から「オオスズメバチ」の巣を掘り上げたので紹介する。
春、5cmほどの大きなスズメバチが重爆撃機のごとくの低音でフィールドを飛翔してきた。
刺されてはいけないように注意していたが、
筆者はある時偶然にも土の中に消えたのを目撃した。
(ここは以前、穴を掘ったものの、枝や葉で覆っただけで埋め戻さずにいて
空洞があったところで、筆者はよく覚えていた。)
暫くして、筆者が付近を通ると何匹かが付きまとうようになったので、
「これはやばい!!」と感じた。本当にあの辺に巣を作ってしまったのだ。
地中に巣を作るから「オオスズメバチ」だ。
クワバラ、クワバラ・・・。さわらぬ神にたたりなし・・・。
と夏~秋~冬まで放っておいた。
メンバーにも周知して付近は通行禁止に。
2013年12月15日、もう成虫はいないだろう時期になってから掘り出してみたところ、
案の定写真のような「オオスズメバチ」の巣が。
一番上段の巣盤は掘出し中に壊してしまったがそれでも残りの3段でも見事。(以下写真)



ラッカーニスなどを塗って長期保管に耐えるようにしたいと考えている。
b)クロスズメバチ(ヘボ)
スズメバチも「人を殺傷させる程の強力な武器を持たなければ、
ミツバチの如く我ら人間とうまく共生できたものを・・・。」と
神のいたずらに無常を感じるのだが、
一方、同じスズメバチの種であっても、「クロスズメバチ」は共生というか、
人間にとって大いにありがたい蜂である。
筆者は岐阜県中津川市生まれ。
この地、あるいは周辺の長野県、愛知県などでも同じように
「クロスズメバチ」を「ヘボ」と呼んで、いわゆる「蜂の子」を獲る地域だ。
地中に作られたクロスズメバチ(ヘボ)の巣を見つけだし、
中の蜂の子(幼虫、蛆虫)を獲るのだが、
かつては貧しかった岐阜や長野の山村での貴重なタンパク源である。
近年、観光地でのお土産物店で「蜂の子」を買えば小さな瓶詰のものでも数千円もする。
筆者および家族はその後、静岡県御殿場市に転居し、筆者は少年時代を迎えるのだが・・。
御殿場の地で蜂の子を獲ることになるとは!!
父親や6歳も年上の兄らから伝授されたのである。
蜂の子の獲り方の概要は以下のとおり。
①トノサマカエルなどを捕まえてそのモモ肉を細い棒に絡みつけて、
田んぼの畔に刺しておく。
②クロスズメバチがそれを見つけると肉塊を口で切って巣に運ぼうとする。
その肉塊に我らが一仕掛けをする。
③母親からもらった少量の真綿
(昔は布団を家で打ち直していたので各家には必ずあった。)
を細く指で撚ってその肉塊に絡ませる。
長さは数センチである。
この時、クロスズメバチと指先に軽い接触があるのだが刺されることはなかった。
④働き蜂はその肉塊を咥えて帰巣が、
重いため数十メートルほど飛んでは木などに留まって休む。
我らはそれを見失しなわぬよう田んぼを突っ切りブッシュをかき分け
汗だくになって数キロを追跡していく。
途中、比較的大きな川(喜瀬川など)を渡られたらギブアップ、
諦めるしかないがそれでも遠回りして追跡した時になんと、
偶然にもまだ飛んでいて追いついたことがある。
この方向勘が当たった時は何とも嬉しかった記憶がある。
独りだけでは無理で友人や兄・その友人らの協力のたまものだ。
⑤働き蜂が穴の中に入るのを見届けると自分だけの目印を付けておいて
いったん家に戻る。花火(煙の出るもの)やセルロイド(燃焼が激しく煙も多く出る)は
もちろん、懐中電灯やスコップ、戦利品を入れる箱や袋を準備して出発する。
時季は夏終わりころから初秋にかけて遊んだような気がするが、
巣も大きくなるのがこの時期だから合っている。
⑥そして、夜になって(蜂は夜には動きが緩慢)花火に火を付け
穴の中に突っ込み十分燻す。頃合いを見て土を掘ると中からスズメバチ特有の
数段になった巣が現れる。
弱っている成虫を払い取り除き4,5段の巣盤だけをいただくのだ。
この時、女王蜂や働き蜂が間もなく死んでしまうことなど全く考えなかった。
⑦家に戻りピンセットでその幼虫を取り出し、
それを母親に炒ってもらって食べた。
本当にうまかったなと感じている。
栄養もたっぷりと思う。(山のミルクであろうか。)
⑧獲った時まだ巣が小さかったりした時は木の巣箱に巣ごと入れて
軒下の壁に掛けておく。
そうすると、けなげにも巣を再構築して増殖してくれる。
(再び頃合いを見て蜂の子をかすみ獲るから本当に悪い人間どもだ!)
c)雑感
このようにクロスズメバチ(ヘボ)には刺されても腫れ上がるようなことはなかったので、
人間とはうまく共生ができるようだ。
生業でやるにはいわゆる「養殖/養蜂」すれば苦労ないと思われるが、
実際はなかなかうまくいかないかもしれぬ。
Netによれば危険な「オオスズメバチ」、「キイロスズメバチ」などを管理養殖して、
これらの「蜂の子」を高く販売している例や、
キイロスズメバチの成虫を焼酎漬け(強精酒になるのか?)を高く販売している例がある。
(6)スズメバチの危険性
①刺されたら速やかに応急処置を行う。
あれば毒吸引器「ポイズンリムーバー」で蜂毒を吸引する。
無い場合は指で蜂毒を絞り出して水道水などで流すようにする。
応急処置で被害が軽くなるが、それでもだいぶ大きく腫れるようだ。
いずれにしろ、病院にて手当を受けなければならない。
したがって、イベントの主催者、リーダーたる者は常に悪い事態を頭に入れるほか、
消防署や病院への連絡、応急処置などが落着いて行動できるよう
トレーニングしておかなければならない。
②長期的には蜂毒によるアレルギー体質に転換してしまうので
二度目に刺されると、いわゆる「アナフィラキシーショック」で死亡することがあるので要注意。
③したがって一度刺された人はそれを常に頭に入れて、
「緊急補助治療医薬品」(商品名:エビペンなど)を常備するとともに、
周囲の人にも周知して、万が一、刺された場合は速やかに注射を打ってやる。
(15分~20分以内にともいわれており緊急を要すことである。)
このような時は救急車を待たずして皆でできる限りの応急処置をすることが肝要である。
④スズメバチは突然、人を襲うのではなく、巣に異常に接近したり、
草刈/枝落としなどの破壊行為が近づくと警告行動を示す。
山に入るときは(公園などでも)ボーッとしていないで
周囲の状況変化をできるだけ早く気づくよう目や耳を働かせていることが肝要。
⑤スズメバチが近づいてきても手で払ったり叩いたりせず、
姿勢を低くして静かに行き過ぎるのを待つ。
⑥スズメバチのいるエリアでは極力白色の服装が良い。
香水や整髪剤などはつけないほうが良い、
缶ジュースの缶の飲み残し果汁が残っているとその中にいることもあるようだ。
覚えておきたい事項である。
⑦コガタスズメバチのようによほど巣に危害を加えるような事態(草刈/枝落とし)
にならないと襲ってこない大人しい蜂がいる反面、
地中に巣があり存在に全く気が付かず半径約3mの危険ゾーン内に立ち入ってしまうと
襲ってくるオオスズメバチなど、いろいろな危険があることを知って、
その状況に応じた行動をとれるように考えておくことが肝要。
いずれにしても、自然保護活動や植物/野鳥等の自然観察にあたっては
安全第一で楽しみたいものである。ご安全に!
以上 (作成 磯川)
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