第9回 雲霧帯の植生
熱帯の高山では、一定の標高に毎日雲が発生して雲霧帯が形成されるため、非常に湿った森林(雲霧林や蘚苔林という)が成立します。周囲を海で囲まれた海洋島においても、概ね500m以上の標高に雲霧林が出現します。
島の標高が1000mを越えるハワイ諸島やガラパゴス諸島では、発達した森林は雲霧帯でのみ見られ、ハワイではハワイフトモモ(オヒア)林、ガラパゴスではスカレシア林がそれに当たります。両者とも林冠はほぼオヒア、あるいはスカレシア1種が優占する、一見、非常に単純な森林ですが、林内には固有の動植物が集中して見られる貴重な存在でもあります。
ハワイは北東貿易風、ガラパゴスは南島貿易風が一年中卓越して吹いているので、島の風上側には雲霧帯が発達し、山頂を越えた風下側は一転して乾燥した環境となります。また、雲霧帯の下に広がる低地は乾燥するため、サバンナのような景観となるのがふつうです。
一方、雲霧帯を突き抜けた亜高山帯や高山帯も乾燥するので、高山帯特有の植物や植生が見られます(ハワイのギンケンソウなど)。小笠原群島(聟島、父島、母島列島)は標高が低い(最高が母島の乳房山462m)ので、母島の主稜線部のみにかろうじて雲霧帯的な環境があり、小笠原で唯一のワダンノキ群落が残存しています。
ガラパゴスのスカレシアと小笠原のワダンノキはいずれもキク科に属する樹木で、それぞれ固有属をなし(スカレシアは15種に分化、ワダンノキは1属1種)、草本的な祖先種が島に渡ってきた後に、樹木に進化したと考えられています。ガラパゴスと東洋のガラパゴス(小笠原)の雲霧帯でこのような平行的な進化が起こったことはたいへん興味深いことです。
ちなみに、小笠原諸島のもう一つの列島をなす火山(硫黄)列島の南硫黄島(916m)、北硫黄島(792m)はいずれも500m以上の標高があるので、島の上半部は湿性な雲霧帯となっていて独特の植生が見られます。
(初出:2018年5月25日)
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