第15回 生物の名前(2)和名
和名とは、基本的に日本の生物につけられた日本語の名前のことです。ただし、地方ごとに呼び名が変わる生物も多数あります。学名と異なり命名規約のような共通のルールがないので、このままでは混乱が起こります。そこで明治時代以降に図鑑が整備される中で代表的な和名を標準和名として選定する作業が行われてきました。現在では一つの種に一つの標準和名が対応しているので、標準和名を用いれば問題ないと言えます。
日本語の表記法では生物名はカタカナで書くことになっているので、和名もふつうは「ヒガンバナ」のようにカタカナで表します。また、和名のない外国産の生物を日本語で表したい場合には、学名をカタカナ表記する方法が用いられます(例:Acanthus mollis→アカンサス・モリス)。
和名の使用で気を付けなければならないのは、名前が正確な類縁関係を表さないことです。アカマツ、クロマツ、ハイマツはマツ(Pinus)属ですが、カラマツ(Larix属)、トドマツ(Abies属)、エゾマツ(Picea属)などは、名前に「マツ」がついていてもマツの仲間(マツ属)ではありません。ヤブラン、マツバラン、キミガヨランなど「ラン」とついていても、ランの仲間(ラン科)とは関係がありません。また、トウヒ(Picea jezoensis var. honndoensis)はエゾマツ(Picea jezoensis)の本州産の変種の扱いなのですが、和名からはそのつながりが読めません。類縁関係を確かめる際には必ず学名に当たる必要があります。
和名についてはアホウドリやママコノシリヌグイのように、現在からみて適切とは言えない名前が付けられてしまっているものがあります。和名の付け方には学名ほど厳格なルールはないので、混乱が起こらないように配慮しながら標準和名を変更することもあってよいのではないでしょうか。
(初出:2018年11月16日)
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