第11回 亜熱帯とは何か
一般に熱帯と温帯の中間(移行する部分)を亜熱帯と呼びます。しかし、亜熱帯の実態となると実はよくわかっていません。気候と植生の両面から考えてみたいと思います。
地球は傾いて自転しているために、赤道で温められた気団(熱帯気団)と北極周辺で冷やされた気団(寒帯気団)が中緯度でぶつかり合い、温帯性の低気圧や前線を作ります。夏には熱帯気団(太平洋高気圧など)が北上し、冬には寒帯気団(シベリア高気圧など)が南下するため、夏と冬で優勢な気団が交代する場所ができます。また、熱帯で上昇した気流が緯度20-30度付近で下降気流となり広大な高気圧帯を作るので、ここには非常に乾燥した気候帯が現れます。
これに植生を重ねてみましょう(北半球で説明します)。熱帯は高温・多湿なので熱帯多雨林が成立します。その北には上記の乾燥帯が現れるので雨緑樹林(雨季、乾季の別あり)、サバンナ、ステップ、砂漠などの乾性系列の植生帯が現れます。
世界的に見ると熱帯と温帯の間(すなわち亜熱帯)は、ふつう乾燥植生が対応するのです。ただし、暖流の流れる大陸東岸はこれらの緯度でも湿潤な気候が保たれるので、例外的に湿性系列の亜熱帯多雨林が成立します。そして、さらにその北には暖温帯の照葉樹林が続きます。ですから、日本で標準の植生帯区分では、熱帯多雨林(熱帯)と照葉樹林(暖温帯)との間が亜熱帯多雨林(奄美・沖縄の低地林)ということになります。
ただし、この亜熱帯多雨林は組成的にも構造的にも独自の内容をもたず、熱帯多雨林と照葉樹林の移行的な性格の強い植生であり、分布範囲も限られています。
一方、世界標準で温帯というときは、四季の変化が明瞭(熱帯気団と寒帯気団が夏冬で交代する地域)で、冬に落葉する落葉広葉樹林の優占する地域をイメージすることが多く、日本ではブナ・ミズナラの優占する夏緑樹林がこれに当たります(世界標準ではふつう温帯を暖温帯、冷温帯には分けない)。
以上を総合すると、実は日本の照葉樹林こそ世界標準では亜熱帯の植生ということになり、いわゆる亜熱帯多雨林は独立した植生帯とはせず、熱帯多雨林(熱帯)と照葉樹林(亜熱帯)の移行帯と捉えるのが適切であるといえます。(ただし、読者はまず基本知識としてベイシック・テキスト通り覚えてください。)
(初出:2018年8月3日)
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