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2023年6月 8日 (木)

第12回 種とは何か

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種子除去装置の使い方


 表題の「種」を「タネ」と読んだ人はいませんか。これは「タネ」ではなく、「シュ」と発音します。今回は生物分類の基本単位である種(英語では単複同形のspecies)について取り上げます。

 種の命名法を考案したリンネの活躍した18世紀のヨーロッパでは、キリスト教の考えに基づき、種は天地創造の時に神が一つ一つ形が違うようにお造りになったものと考えられていました(一度できてからは変化しない)。そこで形が同じならば同種、形が異なれば異種というように、形の異同で種を判別する「形態学的種概念」が一般的でした。しかし、1859年にダーウィンが進化論を唱えてから、形は時間とともに変わりうることがわかり、新しい種のとらえ方が必要になりました。

 マイアーが1945年に唱えた「生物学的種概念」は、「同種とは互いに交雑可能な個体の集まり、異種との間に生殖的隔離が成立しているもの」と表わされます(種の定義)。すなわち、同じ種に属する個体どうしでは自由に交雑がなされ、正常な子供が生まれるという交雑可能性を基準に種を捉えようとするものです。現実の生物界では明らかな別種同士でも繁殖力のある雑種個体ができるような例が多々あり、また、無性生殖で増える生物にはこの定義を適用できないなど難点はあるのですが、今のところこれが一番受け入れられている種の定義となっています。

 最近では遺伝子レベルの解析が進んで、異なる種の間では遺伝子の内容(塩基配列)が異なることが知られています。しかし、どの程度遺伝子の内容が異なれば別種としてよいかということは系統によりばらばらであり、単純に遺伝子の差の度合いで種を分けることはできません。例えば、ヒトとチンパンジーでは約30億塩基対(30億文字分の情報)のうち、わずか2.5%しか違いが見られません。

 種が進化するものである以上、種は常に変化しつづける存在であり、「種とは何か」という問いは生物学の永遠の課題であるともいえます。ちなみに、生物学の文章では、「種」と「種子」(タネ)を使い分けると混乱しないですみます。

(初出:2018年9月8日)

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