第13回 種内変異
分類学の基本単位は「種」なので、単位の性質上「種」をこれ以上分割することはできないはずです。しかし、生物は進化する存在なので、一つの種の中にもさまざまな変異が見られ、種内変異と呼ばれます。
種内変異に対して亜種、変種、品種の区別がなされています(あくまで必要に応じて設定される)。亜種は異なる地域間(異所的という)で明瞭な変異が見られる場合に基本亜種に対して設けられます。変種は異所的、同所的を問わずに個体間で変異がある場合、また、品種は同様に変種よりさらに軽微な変異を区別したい場合に設定します。
学名で表示する場合は、通常の学名の後に、亜種(subsp.)、変種(var.)、品種(f.)の略号をつけて、亜種名、変種名、品種名をつけます。ただし、最近の傾向として、動物分類では亜種までを認めて変種や品種は用いないのが原則となっています。もともと個体間には多かれ少なかれ変異があるものなので、あまり細かい変異を区別しても切りがないと考えるのでしょう。しかし、植物分類では今でも3つの区分が使われています。
さて、品種には栽培品種や飼育品種というものがあります。これらは野菜や果物、家畜など人間が長い時間をかけて改良を加えてできたものです。例えば、キャベツを改良してブロッコリー、カリフラワー、メキャベツ、ハボタンなどが作られました。これらの形は互いに大きく異なっており、とても同じ種に属するとは思えませんが、実際は互いの遺伝的な差は小さくて掛け合わせれば正常な雑種個体が生じます(すなわち、種としては同一なまま保たれている)。こうした人工的な品種と野生状態での品種を混同しないように注意する必要があります。
最近、遺伝子の解析が進んだ結果、形態的に全く区別できないが、遺伝子組成は異なっており、実際に野外では微妙にすみ分けがなされていたりして交雑が生じていない(つまり別種となっている)ものが見つかっています。これらは隠蔽種と呼ばれます。
種内変異の扱いは研究の進展とともに変わることもあります。ガラパゴス諸島のゾウガメは従来は島ごとの亜種に分けられていましたが、最近の遺伝子による研究の結果、それぞれの亜種が独立した種に格上げされました。
(初出:2018年9月21日)
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