« 第19回 分子時計 | トップページ | 第21回 ニッチ »

2023年7月20日 (木)

第20回 APG分類体系

9784832609839
APG原色樹木大図鑑(北隆館)

 
 植物の中でももっとも進化した被子植物の分類体系には、従来、新エングラー体系やクロンキスト体系が用いられてきました。いずれも形態の類似性にもとづく伝統的な分類学の手法により作られた体系です。

 1990年代以降、遺伝子の塩基配列を直接比較して系統関係を構築する研究(分子時計を用いた解析)が進み、従来の分類体系に大幅な修正がほどこされることになりました。表題のAPGとはAngiosperm Phylogeny Group(被子植物系統発生グループ)という研究者の団体名で、この組織が提唱しているのがAPG分類体系、その概要は次の通りです。 

「従来、被子植物は大きく双子葉類(子葉が2枚)と単子葉類(子葉が1枚)の2グループに分けられてきたが、単子葉類は被子植物全体の進化の途中に派生した1系統(変り種)である。まだ単子葉類が分かれる前の、双子葉類と単子葉類の共通の祖先は原始的なグループ(スイレン科やモクレン科など)を構成し、原始的被子植物とよぶ。これらは花に花軸的な構造を残し(軸のまわりにらせん状に花葉がつく)、花弁とガクの分化が不十分な特徴をもつ。

 これに対して、単子葉類が分かれた後に発展したより新しいグループを真正双子葉植物とよぶ。この仲間では花托の上に花被やおしべ、めしべが載るようになり、花葉の数がより少なく、付き方がより規則的になる。真正双子葉植物は4つの大きなグループに分けられ、バラ類とキク類が一番進化したグループとなる。」

 従来の分類体系とAPG分類体系とを比べると、属レベルでの異動(異なる属へ移す)だけでなく、かなり大きな配置換え(科、目レベルの再編成)も珍しくありません。例えば、従来のユリ科に含まれた種は19の科に空中分解し、ユリ科に残ったのはユリ属やホトトギス属などわずかとなりました。このことは、従来の形態による分類が、「見かけの類似性」に大きくだまされてきた(相同や相似を正しく見抜けなかった)ことを物語っています。

 現在、APG分類体系もほぼ内容が固まりつつあり、日本産の植物を網羅した『日本の野生植物』(平凡社)が、新分類体系によって大幅に改定されたところです。カエデの仲間がカエデ科からムクロジ科になるなど、従来の分類に慣れ親しんできた人にとっては戸惑いも大きいと思いますが、APG分類体系が“正しい最終の姿”なので、徐々に頭を切り替えていくしかないでしょう。

(初出:2019年4月19日)

 

« 第19回 分子時計 | トップページ | 第21回 ニッチ »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 第19回 分子時計 | トップページ | 第21回 ニッチ »

最近の写真

  • 950502isabelavelasco-1
  • 950718hawaii
  • 1977_20240205163701
  • 950405cruisetaguscove-47
  • 950403_20240122151601
  • 950405puntaespinosa-18
  • 950503isabelavelasco-9
  • Photo_20240108145901
  • 910531maui
  • Hx_01945
  • Img_20171108_175445
  • Img_1674