第18回 相同と相似
生物の分類は互いの類似性(似ている度合い)が基本になっている。ところで、生物の類似性には相同(ホモロジー)と相似(アナロジー)が認められる。相同とは、共通の祖先のもっていた構造が多様に分化したもので、見かけは異なっていても由来が共通している場合である(見かけの違い)。相同は比較形態学の基本的概念である。
相同を判定するには、共通の配置(全体の体制の中での位置)、構造(骨の組合せなど)、発生(同一の前駆体からの生成)などに注目する。よく引かれる相同の例としては、シーラカンスの胸鰭、鳥類の翼、コウモリの翼、クジラの鰭脚、イヌの前脚、ヒトの上肢などが上げられる。これらは鰭、脚、翼と形や機能は異なっていても、共通の由来をもつ相同器官である。
一方、相似は、直接の系統的な離縁関係のないものの間でみられる、見かけ上の形態や機能の類似をいう(他人の空似)。昆虫のオケラと哺乳類のモグラはいずれもシャベル型の脚をもっているが、これは土のなかにすんで土を掻き出す機能を果たすために形が似てしまったためである。
また、系統の異なる生物が次第に相似的な形質をあらわすように進化することを収斂とよぶ。収斂には個々の種の形質レベルのほかに、異なる地域の群集レベルで起こるものがある。オーストラリアの有袋類と旧大陸の真獣類のように、よく似たニッチを占める種の形態が似る(フクロオオカミとオオカミ、フクロモモンガとモモンガなど)ことで、セットとしてよく似た生物群集が現われる。
形質を評価する時にもう一つ注意すべき点は、痕跡器官(機能を失って退化した構造)の存在である。クジラの後脚やヘビの脚などがその例である。分類学がもっぱら形態の比較に頼っていた時代には、こうしたノイズに如何に騙されずに本来の類縁関係を見抜くかが分類学者の腕の見せ所であった。
(初出:2019年2月22日)
« 第17回 分類体系 | トップページ | 第19回 分子時計 »



コメント