第27回 進化をめぐる誤解(3)
進化論は人間社会にもあてはまる?
ダーウィンが進化論を発表すると、一部の人たちはこれを人間社会にも当てはめて、当時勃興しつつあった剥き出しの資本主義社会を正当化する理論として論じるようになりました(社会ダーウィニズム)。また、1970年代に動物行動学の分野で、人間の行動の起源を考える際に進化論を援用(人間の行動にも進化的な背景がある)して論じたところ、人権擁護の立場から強い批判を受けるということがありました(社会生物学論争)。このように進化論を人間社会に当てはめようとすると、デリケートな問題が生じてくるのですが、ここでは、「進化論は弱肉強食の世界を肯定するもの」とする誤解について取り上げます。
「弱肉強食」の言葉で思い浮かぶのは、ライオンがシマウマを襲って食べるシーンなどでしょう。しかし、これはいわゆる食物連鎖の一コマであり、進化とは直接関わりのないことです。進化論であつかう生存競争や自然選択はライオンとシマウマのような異なる種の間で起こるものではなく、同じ種の個体間で起こる現象を指しています。より上手にシマウマを捕まえることができるライオンやより速く逃げることができるシマウマが、同種の他個体よりも生存率が高まってより多数の子供を残せるということなのです。
また、自然選択には闘争すること、争いを避けること、助け合うこと、何もしないことなどあらゆる場合が含まれます(どのような変異であれ、より多くの子供を残せるものが結果として集団に広がる)。弱肉強食という言い方は、生物世界のごく一面を見て、人間社会において強者が弱者を支配するのを正当化する言い訳に利用した、人間の身勝手な解釈といえます。
現実の生物世界における正常な食物連鎖では、ライオンがシマウマを食べ尽くすことは決してありません。シマウマがいなくなったらライオンも食糧がなくなって滅びざるをえないのです。一人勝ちはいずれ自分の身も滅ぼすのです。
(初出:2019年12月20日)
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