第22回 進化と進化論
今回から進化と進化論に関するいくつかの事柄を取り上げます。初めに進化と進化論の違いについて説明します。
個々の種が神により創造され、一度できた種は変化しないと信じられていた時代には、「生物が進化する」という考えは一つの仮説であったと言えます。しかし、19世紀以降、地球上の生物は大昔の共通祖先に由来し、長い時間をかけて現在の姿に進化(多様化)してきたということが、あらゆる分野で実証されるようになりました。現在の科学では、「進化」は仮説ではなくまぎれもない“事実”であり、今後再び進化そのものが否定されることはないと断言できます。
一方、生物の進化がどのようなメカニズムで起るのかを説明する「進化論」はいまだ仮説の段階です。現代の進化論の基礎を作ったのは、チャールズ・ダーウィンであり、1859年に出版された『種の起源』で初めてその内容が公表されました。今でも進化論といえば「ダーウィン進化論」が取り上げられるのですが、注意しなければいけないのは、ダーウィンの時代には遺伝子や遺伝の仕組み(分子レベルの具体的なメカニズム)についてはまったく知られていなかったことです。そこでダーウィン進化論に浴びせられたさまざまな批判に対して当時は的確な反論ができないことも多々ありました。
しかし、その後の160年間に、遺伝の仕組み(メンデルの法則)、突然変異、遺伝子の正体(DNAの塩基配列)、集団中の遺伝子の振舞い(集団遺伝学)などの詳細が突き止められ、今では分子レベルで進化のメカニズムを具体的に説明できるようになりました。
つまり、現在の進化論(ネオ・ダーウィニズムとよぶ)はダーウィン進化論(自然選択説、漸進的進化など)を元にしながらも、その後160年間の新事実や新理論を取り入れながら改良に改良を重ねて現在に至っているものであり、進化論も進化を続けてきたのです(例えれば馬車と最新自動車くらいの差がある)。その意味では、ネオ・ダーウィニズムは仮説ではありますが、長年の検証に耐えてきた、確固とした科学理論であると言えます。
宗教分野では今でも「神の創造」を擁護するあまり、「ダーウィン進化論(160年前)の否定=進化の否定」の論理で生物進化を否定する論説が散見されますが、これは科学的には二重の意味で誤りです。まず、進化論を否定するなら現代のネオ・ダーウィニズムを否定しなければなりません。そして、仮に仮説である現代進化論が否定されたとしても、新しい仮説が取って代わるだけで、「進化の事実」そのものを否定することは決してできないということです。
(初出:2019年7月18日)
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