第25回 進化と進化論をめぐる誤解(1)
進化=進歩、でしょうか。
今回から数回にわたって、一般の人が進化や進化論について誤解しがちな事柄を取り上げます。
まず、よくある誤解は、「進化=進歩(前進)」ととらえてしまうことです。「進」の字には肯定的なニュアンスがあるので、ついそう受け取ってしまいがちですが、本来の進化に特定の方向性はありません(英語のevolutionは展開の意味)。そもそも進化の出発点の突然変異はでたらめ(ランダム)に起こるので、変異に特定の方向はありません。その時々の環境の中でもっとも多数の子供を残せる変異が選択されて集団に広まる(自然選択)ので、環境が変われば選択される変異の内容も変わります。(逆にいえば、気候の寒冷化のように、環境がある方向に変わりつつあれば、進化が方向性をもつように見えることもあるでしょう)。
また、進化は必ずしも複雑化を意味しません。寄生虫のように形態や機能が極端に単純化するのも立派な進化です。そこで「進化=変化(あらゆる方向)」が正しいとらえ方といえます。
二つ目は、「進化は集団に起こる現象である」という点に関する誤解です。ある1個体の生殖細胞に突然変異が起こって、その子供に形態・機能の変化があらわれた段階で進化が始まりますが、1~数個体だけでは単なる突然変異体(ミュータント、変わり種)の出現にとどまり、進化が起こったとは言えません。自然選択が働いて、あるいは偶然に左右されて変異が集団に広がるか消滅するかというところ(23回で説明したステップ3)までいって、はじめて進化の言葉を用いるのがふさわしくなります。
また、昆虫のように一生の間で大きく形が変わる場合は変態(メタモルフォシス)といい、個体の進化とはいいません。人気アニメのポケモンでは、成長にともなう形態変化を進化と呼びますが、これも生物学的には変態です。一般の社会では「大谷選手のバッティングは年々進化する」というように使われますが、この場合も技術の進歩であって、生物学的な進化でないことは言うまでもないでしょう。
(初出:2019年10月24日)
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