第24回 中立進化説と断続平衡説
ダーウィン進化論に対する異議申し立てが…。
ダーウィン進化論の2つの柱(自然選択と漸進的変化)を受け継いで発展してきたネオ・ダーウィニズムですが、1970年代にこの2つの大黒柱に対して異議申し立てがなされました。
一つ目は、集団遺伝学者の木村資生による中立進化説の提唱です。
従来、すべての変異は自然選択にかかって選り分けられると考えられていましたが、木村は、変異の中には生存に有利でも不利でもないものがあり、これらの中立的変異は確率的に(偶然に左右されて)集団に固定したり消滅したりすることを理論的に示したのです(中立進化説)。現在、この考えは自然選択と並んで集団の遺伝的構成を変えるメカニズムとして、ネオ・ダーウィニズムの中に組み込まれています(前回説明の「ステップ3」に修正を加えた)。
二つ目の批判は、古生物学者のエルドリッジやグールドらが行なったもので、断続平衡説と呼ばれます。
ダーウィン以来、進化は一定のスピードで徐々に起こる(漸進的変化)と考えられてきましたが、化石の時代毎の変化をみれば、形態が激しく変化する時期とほとんど変わらない時期があることは明らかであり、彼らは、進化は断続的に起こる(新種ができる時は急激に変わるが、完了すると安定した状態になる)と主張しました。
分子時計の考えによれば、突然変異は一定の頻度(速さ)で常に起こっており、遺伝子(塩基配列)の変化は徐々に蓄積していくことが認められています。そうすると、どの生物も世代を経るごとに遺伝子の内容は常に変化しているのだが、それが形に現われる場合と現われない場合があるということになります。おそらく環境が一定の時期には遺伝的な変異が起こっても表に現われず、環境が変わったときに一挙に形の変化が起こるようなメカニズムがあると思われます。このような遺伝子の変化と実際の形の変化との関係は、現代進化論の重要な研究課題です。
最後に注意しなければならないのは、一般向けの解説書などにおいて、中立進化説や断続平衡説があたかもネオ・ダーウィニズムを否定し、これに取って代る新しい進化論であるかのように紹介されることです。これは全くの誤解であって、中立進化説や断続平衡説もネオ・ダーウィニズムの土俵の上で、より細かい見解の相違を争っているのです。中立進化説がそうであったように、ネオ・ダーウィニズムは新しい理論が正しいとわかれば、それも取り込んで改良されていくものなのです。
(初出:2019年9月25日)
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