第26回 進化をめぐる誤解(2)
進化=新種形成、でしょうか。
「進化とは新種が誕生すること」という誤解があります。現代の進化論では、「進化とは集団の遺伝子組成が変化すること(23回で説明のステップ1~3)」なので、新種形成につながるステップ4、5はあくまでその結果にすぎません。
有名な「オオシモフリエダシャクの工業暗化」がわかりやすい事例です。英国マンチェスター地方に生息するオオシモフリエダシャクという蛾には、白地に灰色の班模様の翅をもつ標準型と、体が黒色に変わった黒化型の2型があります。白っぽい地衣類で幹が覆われたカシの木にこの蛾がとまると、標準型はカモフラージュ効果で鳥からの捕食を免れますが、黒化型は目立ってしまって捕食されやすいということから、1845年の調査では、標準型が99%を占め、黒化型は1%しか見つかりませんでした。
その後、工場の排気ガス(大気汚染)で地衣類が枯れ落ちてしまい、カシの木の黒い樹肌が剥き出しになると、立場は逆転しました。黒化型の適応度が上がり、50年後の1895年の調査では、標準型が5%に激減し、黒化型が95%にまで増加したのです。この現象は、黒い翅の遺伝子が環境の変化によって個体の生存に有利となったため、自然選択が働いて集団に広まったと解釈されます。
実は、この話には続きがあり、1970年代に大気汚染が改善されて白い地衣類が復活すると、再び標準型が増加してきたのです。そのため、これは可逆的な変化であって進化ではないという批判もあります。しかし、自然選択が働いて集団中に占める特定遺伝子の割合が大きく変わったことは、まさに進化のプロセス(ステップ1~3)が起こったことを示しており、これは立派な進化の事例といえます。
突然変異は今もあらゆる生物の中で起こっており、これが自然選択により、あるいは偶然に左右されて、集団中に広がったり消滅したりしています。進化は決して過去の出来事ではなく現在進行中の現象なのです。
「進化を実際に見た者はいない(だから進化は実証されていない)」という批判がありますが、これは「進化=種分化(新種形成)」と狭く解釈し、ふつうは地質学的な時間スケールで起こる現象のみを進化と捉える点で正当な批判とはいえません。
(初出:2019年11月22日)
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