第37回 適応放散的種分化(8)
海洋島は小さな島の集まりですが、長く孤立した大陸島や大陸そのものも、「島症候群」の観点からすると海洋島的な性格を強くもつ場合があり、「島大陸」と呼ばれます。マダガルカルやオーストラリアなどです。今回は「究極の海洋島」とも言えるオーストラリアを取り上げましょう。
オーストラリアは長い間ゴンドワナ大陸の一部を構成していましたが、約5000万年前に他の大陸から分離すると、ずっと孤立したまま存在してきました。そのためゴンドワナ時代にさかのぼる古い原始的な動植物が一部残存する一方で、独自の進化を遂げたオーストラリア特有の生物相が形成されました。前者の例として、動物ではハイギョの仲間や原始的な哺乳類である単孔類(カモノハシやハリモグラ)が生き残り、植物では針葉樹のナンヨウスギやウォレミマツなど中生代に遡るものが見られます。
一方、オーストラリアで独自の進化を遂げた哺乳類のグループが有袋類(コアラやカンガルーの仲間)です。かつて有袋類は世界中に広がっていましたが、現在の主流である真獣類が出現すると競争に敗れて絶滅し、孤立していたために真獣類の侵入のなかったオーストラリアにのみ残って独自の発展を遂げたと推定されます(ただし、南米にも有袋類のオポッサムの仲間がわずかに生残しています)。
オーストラリアの有袋類といえば、コアラやカンガルー、ウォンバット、タスマニアデビルなどが思い浮かびますが、総種数は300種以上にも及び、多様な種類が海岸から山岳地帯まで、岩石地帯、草原、低木林、森林とあらゆる環境に適応放散しています。フクロオオカミ、フクロモモンガ、フクロモグラ、フクロアリクイ、フクロネコ、フクロギツネ、フクロリス、フクロトビネズミなど名前が対応する真獣類と形態がそっくりな種が進化したダイナミックな収斂現象でも知られています(対応種がないのはフクロコウモリ、フクロゾウ、フクロザル、フクロキリンくらい?)。
また、有袋類の植物版がフトモモ科のユーカリの仲間です。ゴンドワナ大陸から分離したオーストラリアはその後北上を続け、亜熱帯域に入って大陸全体が乾燥化してくると、ユーカリ類は多雨林(東海岸にわずかに残存)を除く様々なニッチに進出して形態を分化させ、600種を超えるまでになりました。さらに、乾燥した内陸の半砂漠地帯に進出して多数の種に分化したのがマメ科のアカシア類です。アカシア類はアフリカのサバンナに点在する樹木としても知られていますが、アフリカのアカシア類は動物に食べられないように鋭いトゲで重武装しているのに対して、オーストラリアのアカシア類はほとんどトゲが見られないのが印象的です。
実はアフリカもゴンドワナ大陸の一部を構成し、分離してからしばらくは孤立した大陸として存在したために、アフリカ獣類(ゾウ、マナティー、ツチブタ、イワダヌキなど)と呼ばれる独特の哺乳類(真獣類)グループを進化させました。結局、どの大陸も幾分かは「島大陸」としての性格を有していると言えるでしょう。
(初出:2020年10月23年)
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