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2023年9月 7日 (木)

第29回 進化をめぐる誤解(5)

進化をめぐる誤解

 今回で進化をめぐる誤解については終わりとします。

 まず、「ヒトはチンパンジーから進化した」という誤解です。「ヒト(人類)はサルから進化した」という言い方は正しいのですが、「ヒトはチンパンジー(系統的に最もヒトに近い)から進化した」というのは間違いです。正しくは、ヒトもチンパンジーも約700万年前の共通祖先から進化して現在に至っているということです。ヒトが様々な化石人類の段階を経て現在に至っているように、チンパンジーの系統でも様々な進化を経て現在のチンパンジーがいるわけです(チンパンジーの枝ではボノボという別種が現存しています)。ですから、今後チンパンジーが進化を続けてもヒトのような種になることはないでしょう。

 進化をめぐる誤解の最後に、「ヒトこそが進化の頂点に位置している、進化はヒトに向かって進んできた」という誤解について考えてみましょう。すべての生物は始原生物を起源とし、40億年の進化の結果現在に至っているという点で、対等な関係にあります。ヒトだけが特別なわけではありません。

 確かにヒトの身体はかなり複雑な部類に属しますが、以前にも述べたように、複雑化する方向にのみ進化が進んだわけではなく、進化はあらゆる方向に進みうるのです。ヒトは知能が発達しているので一見生物界の頂点にいるように感じますが、鳥のように空を飛ぶことはできませんし、魚のように自由に水中を泳ぐこともできません。空を飛ぶことで言えば、鳥の仲間が頂点にいるといえましょう。何を尺度に考えるかで、位置づけは変わるわけです。

 そして、進化に終わりや完成はありません。地球環境は常に変化しており、また、生物同士の関係も刻々と変化しているので、そうした変化に対応するための進化はこれからもずっと続いていくのです。ただし、ヒトの場合、自らがつくり出した人工的な環境が自然環境を凌ぐほどに発達したので、生物としてヒトがこれにどう対応していくのか、計り知れないところがあります。

(初出:2020年02月21日)

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