第35回 適応放散的種分化(6)
ハワイでは、植物でもとてつもない適応放散的種分化が生じました。その代表であるキキョウ科のロベリア類(Hawaiian Loberioids)について紹介しましょう。
ハワイでは100種を超えるロベリア類が知られており、形態の多様性から7属に分けられ、独立した5回の祖先の到着があったとされていました。しかし、遺伝子レベルの研究により、これらはすべて1300万年前にハワイに到着した一つの祖先に由来することがわかりました。1300万年前というと、現在サンゴ礁の島々となっている北西ハワイ諸島が、現在のハワイ諸島の位置にあって巨大な群島をなしていた時代です。最新の分類では、この仲間は6属127種に分けられています。また、この仲間は大きく、開けた場所で蒴果を作り細かい種子を風散布するグループと、林内の低木として液果を作って鳥散布を行うグループとに分けられ、前者の生態をもつものが祖先として定着し、森林の低木層に進出して後者の生態が進化したと考えられています。
後者の代表が76種に種分化したシアネア属です。この仲間はハワイの1000-2000mの雲霧林に進出し、樹高1mの低木から樹高14mの高木まで多様な形態を発達させました。中にはツル植物のような生活形になったものもあります。前回も紹介したように花冠の形、大きさも多様に分かれ、ハワイミツスイ類の嘴の形との対応関係(共進化)も指摘されています。
また、シアネア属の大半の種は一つの島に限定して分布するという特徴があり、種子散布能力の減少と対応していると考えられます。ロベリアというとアフリカのキリマンジャロ山のジャイアント・ロベリアを思い浮かべる人がいるかもしれません。また、日本本土にはサワギキョウやミゾカクシ、小笠原にはオオハマギキョウというロベリア属の種が存在しています。
先の遺伝子レベルの研究により、これらの間の関係も明らかになりました。なんとハワイのロベリア類と一番類縁の近いのはアフリカのロベリアであったのです。真相はわかりませんが、アジアのロベリアの仲間の一部がハワイとアフリカの両方向へ長距離分散をしたのではないかと推測されています。小笠原のポリネシア要素とされるオオハマギキョウは、将来ハワイやアフリカのロベリア類を作ることになる祖先とは、より古い時代に枝分かれした系統の子孫ということになります。
ハワイの植物の適応放散的種分化の事例としては、もう一つキク科のギンケンソウの仲間(マウイ島ハレアカラ山頂の銀剣草が有名)が上げられます。こちらも約500万年前に到着した唯一の祖先に由来し、3つの固有属30種に分化しました。中でも23種を有するドゥバウチア属は、低地から高地、乾燥地から湿地のあらゆる環境に進出し、矮性低木から高木、クッション植物、ロゼット植物、ツル植物と多様な生育形に進化しました。ハワイは生物進化の宝庫なのです。
(初出:2020年8月27日)
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