第32回 適応放散的種分化(3)
今回は、ガラパゴスを代表するもう一つの爬虫類として、イグアナを取り上げます。
ガラパゴスのイグアナの祖先は中米のトゲオイグアナ属とされ、約1100万年前にガラパゴスに渡ってきたと推定されています。現在のガラパゴスでもっとも古いエスパニョラ島の年代は約400万年前とされているので、今は海底に沈んでしまったもっと古い時代の島に到着して、新しい島ができるとそこに移動しながら分布をつないできたと考えられます。
ガラパゴスには、リクイグアナ2種、ウミイグアナ1種(島ごとに大きさや形、色合いの異なる多数の亜種に分化)、ピンクイグアナ1種が存在しています。世界のイグアナの仲間はすべて陸生なので、おそらくリクイグアナの一部が海に進出してウミイグアナに進化したのでしょう。
ウミイグアナは海に潜り、長い爪で岩にへばり付きながら海藻を食べます。変温動物なので寒流の冷たい海に長くは留まれず、上陸すると溶岩の上に群れとなって日向ぼっこをします。人間を恐れないのでエコツアーではすぐ間近で観察することができます。
第28回でも触れましたが、ガラパゴスでは不定期にエルニーニョ(多雨)とラニーニャ(旱魃)の年が現れます。エルニーニョになると海水温が上昇して海藻が枯れてしまうため、ウミイグアナは大きなダメージを受けます。1997年のエルニーニョでは実に全個体数の半数が死亡したといわれます。
このような厳しい環境を生き抜く上で興味深い現象が見られました。1980年にサウス・プラザ島で見つかったハイブリッド(雑種個体)はリクイグアナ(雌)とウミイグアナ(雄)の雑種個体で、陸上でサボテンを食べることはリクイグアナと似ています。しかし、ふつうのリクイグアナは木登りができないのに対して、ウミイグアナから鋭い爪を受け継いだハイブリッドは木登りができ、高いところのサボテンを食べられるという利点を有しています。この雑種の運命がどうなるのか興味深いところです。
また、2009年にはイサベラ島北のウォルフ火山の高地で、体が薄ピンク色の新種ピンクイグアナが発見され、遺伝子の研究により570万年前にリクイグアナの祖先から分岐した原始的な種であることが判明しました。ガラパゴスの玄関口で飛行場のあるバルトラ島のリクイグアナは、人間の持ち込んだ外来動物の影響(ヤギによる植生破壊、ネズミ、イヌ、ネコの捕食)によりいったん絶滅しました。しかし、別の島に移してあった一部の個体から人工的に増殖することに成功し、ヤギを根絶した後の島に返すことで、現在バルトラ島のリクイグアナは復活を遂げています。
(初出:2020年05月21日)
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