第31回 適応放散的種分化(2)
海洋島のガラパゴスには強力な捕食者となる哺乳類がいません(哺乳類としては例外的にコウモリとネズミのみ生息)。代わって陸上の生態系を形作っているのが、ゾウガメ、イグアナ、ヘビ、ヨウガントカゲなどの爬虫類の仲間です。
まずは“ガラパゴスの牛”(大型草食哺乳類の二ッチを占める)とも呼ばれるガラパゴスゾウガメ(以下、ゾウガメとよぶ)から紹介します。世界最大の陸ガメであるガラパゴスのゾウガメは、今から200-300万年前に島にやってきた、南米のチャコリクガメに近い祖先種に由来すると考えられています。従来15亜種に分けられ、1つの島に1亜種ずつ分布する(イサベラ島は互いに隔離された5つの火山に5亜種が分布)とされてきましたが、現在は遺伝子の研究を踏まえてそれぞれ独立した種として位置づけられています。
大きな甲羅には2タイプがあり、下草の豊富な島ではドーム型、下草の少ない乾燥した島ではより首を上方に伸ばせる鞍型となり、それぞれ環境に適応した形になっています。
また、食べ物となるサボテンとの関係にもわかりやすい進化の跡が見られます。まず、ゾウガメのいる島では、サボテンの実生は鋭いトゲで全身を武装し、ゾウガメの届かない背丈に成長すると茎が固く木化して身を守ります。ところが、ゾウガメのいない島のサボテンは、地面を這うような低木のままで、しかもトゲは産毛のようで全然痛くありません。ただし、サボテンの実はゾウガメに食べられて種子が散布されるので、サボテンはゾウガメの恩恵も受けているといえます。
ガラパゴスのゾウガメは人間の定住以前から船乗りの食糧として乱獲されたため、15種の内、5種がすでに絶滅してしまいました。北方の小島ピンタ島で1972年に発見された唯一の個体はロンサム・ジョージと呼ばれ、ダーウィン研究所の繁殖施設で長らく飼育され人気を博しましたが、2012年に死んでしまいピンタ島産の種は絶滅しました。
一方で、2015年にはサンタクルス島の既存種の生息場所とは別の地域で16番目の新種が見つかったとの報告がありました。さらに遺伝子の研究により、イサベラ島の北部には昔、船乗りたちが別の島で捕まえたカメを放したことに由来する個体が含まれていることが分かり、ひょっとしたら絶滅した種を復元できるかもしれないという話もあります。
実は、上野動物園にはタロウ(ドーム型)とカメキチ(鞍型)という2匹の雄のゾウガメが飼育されています。これまではっきりとした由来が分からなかったのですが、最近の遺伝子の研究により、タロウはサンタクルス島西部の種、カメキチはイサベラ島ウォルフ火山またはサンティアゴ島の種(両者は近縁なのでミトコンドリア遺伝子の解析だけでは確定できず)であることが判明しました。
ちなみに、大型の陸ガメとしてセイシェル諸島のアルダブラゾウガメが知られていますが、ガラパゴスゾウガメとは独立に進化したことが分かっています。
(初出:2020年04月17日)
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