第34回 適応放散的種分化(5)
ハワイは世界でもっとも隔絶した島(周囲の大陸から4000km以上離れている)であると言えます。そのため、ガラパゴス本家よりもガラパゴスらしい生物相を有するのがハワイなのです。また、全体の歴史も古く、北西ハワイ諸島の北端のクレ環礁は約3000万年の古さがあります(3000万年前には現在のハワイ島の位置にあり、大きな島であったと推定される)。
現在のハワイ諸島の中でも、一番新しいハワイ島は、面崎が大きく標高が4000mもあるが侵食はあまり進んでいない一方、成立年代の古いカウアイ島(約570万年前)は、面積がハワイ島の7分の1と小さく、標高は1600mと低くなり浸食の進んだ複雑な地形を有しています。このようにハワイは時間的にも空間的にも進化を進める条件がそろった島なのです。
このようなハワイにおいて、適応放散的種分化を示す代表例は何といってもハワイミツスイ科でしょう。ハワイミツスイは化石種を含めるとたった一つの祖先種から約50種にも及ぶ多様な種に分化したことが知られています。
ミトコンドリアDNAの研究によれば、ハワイミツスイの祖先はアジアから渡ってきたヒワの仲間(アトリ科、ヒワ亜科)であったとされ、時期はカウアイ島ができた頃です。その後、オアフ島ができて間もない350万年前ごろに形態の大きな枝分かれが生じました。ダーウィンフィンチのところでも述べましたが、食性(エサの種類)と採餌方法に対応して、嘴の形・大きさや管状の舌の形態が多様に分化しました。花蜜を吸うタイプは細長く花冠の形に合わせてカーブする嘴(とくに同じく適応放散したキキョウ科のロベリア類との共進化は有名)、植物の軟らかな果実を食べるものは三角形の嘴、硬い種子を食べるものは万力のような太く頑丈な嘴、昆虫食で樹皮の割れ目から虫をつまみ出すタイプはピンセットのような嘴、木の芽をこじ開けて幼虫を食べるタイプは上下非対称の嘴、というように多様化しました。
ダーウィンフィンチでは体の大きさや色合にあまり種ごとの差が見られませんが、ハワイミツスイでは体の大きさや羽の色にさまざまなバリエーションが見られます。ただし、見かけは大きく異なっても、大陸での進化に比べるとたいへん短い期間に分化したので、遺伝子レベルではそんなに異なっていないという、海洋島の生物進化の特徴が見受けられます。約1500年前に定着したハワイ人による伝統的な利用に加え、最近200年間の開発による生息地の減少、家禽とともに持ち込まれた鳥マラリアの蔓延、野生化した外来種のネコやマングースによる捕食などが重なって、現在、ハワイミツスイの多くは絶滅し、15種がかろうじて残っている状態です(12種が絶滅危惧種)。
ハワイの自然を描いた絵のモチーフにもなっている、真っ赤なハワイフトモモの花とその蜜を吸う真っ赤なイイウィ(ハワイミツスイの1種)の取り合わせが、この先もずっと続いてほしいものです。
(初出:2020年7月17日)
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