第30回 適応放散的種分化(1)
今回からは海洋島における生物進化の花形である適応放散的種分化を取り上げます。
第21回「ニッチ」のところで述べたように、海洋島の生物相は貧弱で種数が限られるため、海洋島には空ニッチ(未利用の資源)がたくさんあります。偶然島に到着したある祖先種がその後様々なニッチに進出して、それぞれの場で適応的な形質を獲得して新しい固有種となり、結果として諸島内で一群の近縁種グループを形成することを、適応放散的種分化と呼びます。
ハワイやガラパゴスなどのように一つ一つの島が大きくて島内に多様な環境があり、しかもそうした島が複数群島をなしているような条件では、ダイナミックな適応放散的種分化が起きやすいと言えます。群島をなしていると、島ごとに種分化が起こった後に島間で交流が起こることで、一つの島の中で近縁種間のすみ分けが進むなど、より複雑な進化が起きる可能性が高まります。
ただし、一つ一つの事例が必ずしも適応的であるとは限らず、ただ単に分布が分断されて生殖的隔離が続いたために種が分かれたという場合(分断的種分化)もあります。しかし、両者(適応放散的種分化と分断的種分化)の区別は必ずしも明確ではないので、これからの議論では、両者の違いは問わないことにします。
では、これから具体的な事例を紹介していきます。トップバッターはガラパゴスのダーウィンフィンチです。ダーウィンフィンチの祖先は中南米に分布するクビワスズメの仲間だとされています。諸島に辿り着いた後、4属13種に分化しました(実際は、ガラパゴスの北方700kmにあるココス島にもう1種が分布)。地上フィンチ類はがっしりした嘴をもち、地上で植物の種子やサボテンの実を食べる、樹上フィンチ類は太めの嘴をもち、樹上で昆虫を食べる、植物食樹上フィンチ類は太く下方に湾曲した嘴をもち、樹上で植物の実や芽などを食べる、ムシクイフィンチ類は細い嘴をもち、樹上で小昆虫を採って食べる。このようにエサの種類によって嘴が適した形に変化しているのが特徴です。
ダーウィンフィンチの中には奇妙な習性を進化させたものもいます。キツツキフィンチは木の枝や幹の中にいる昆虫の幼虫を、小枝やサボテンのトゲを使ってつつき出して食べます(道具を使う鳥として有名)。また、ハシボソガラパゴスフィンチはカツオドリなどの羽の根元を突いて流れ出た血をなめとる吸血の習性を進化させました。ガラパゴスの過酷な環境がこうした特異な習性を進化させたものと考えられます。
(初出:2020年03月18日)
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