第38回 適応放散的種分化(9)
適応放散的種分化の話の最後としてマダガスカルを取り上げます。
マダガスカルは世界第4位の面積(587,000km2)をもつ巨大な島です。ゴンドワナ大陸時代は扇の要の位置にありましたが、1億6000万年前にインド亜大陸とともにアフリカ大陸から離れて孤立化しました。マダガスカル-インド陸塊(レムリア大陸ともいう)は白亜紀の間、オーストラリアに匹敵するような面積をもつ小大陸として存在しましたが、8000万年から7000万年前にかけてインドが分かれて北上すると、マダガスカルは孤絶した島として取り残されることとなりました。現在アフリカからは約400kmのモザンビーク海峡で隔てられています。
マダガスカルの生物相の特徴としてまず挙げられるのが、原始的な霊長類の仲間である原猿類のキツネザル類(レムールともいう)の適応放散的種分化です。5科22属99種にもなり、現生種(キツネザル、インドリ、アイアイなど)はすべて固有種です。わずか2000年前まではゴリラクラスの大型種もいたとされます。鳥類ではオオハシモズ科(マダガスカル固有科)の適応放散的種分化が見られます。オオハシモズ類(11属14種)は2000-1500万年前にアフリカのカブトモズ類より派生したと推定されており、ダーウィンフィンチと同様に採餌場所やエサの内容に応じて嘴の形を変化させました。鳥類ではアラビアンナイト物語に登場する巨大なロック鳥のモデルとされる、巨大な走鳥類エピオニルス(象鳥)が人類の時代まで生き残っていたようです。さらに、カメレオンの仲間も世界約200種のうち70種以上がマダガスカル産とされています。
マダガスカルの植物もまた独特の内容を持っています。非常に種類が多い(190科1500属1万2000種)、固有率が高い(7科260属が固有で、種の固有率は約90%)、大きな科がある(ラン科は61属900種、キク科は87属550種)、異端植物(壷型樹形:バオバブ、パキポディウム、多肉植物:アロエ、ユーフォルビア、短枝植物:ディディエレアなど)といわれる奇妙な形態の植物が多いことなどが上げられます。その他にもニチニチソウ、マダガスカルジャスミン、ハイビスカス類など園芸植物の素材を多く輩出しています。マダガスカルはまさに究極の海洋島といえるでしょう。
(初出:2020年11月20日)
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