第28回 進化をめぐる誤解(4)
進化のスピードについても誤解があります。
進化のスピードについても誤解があります。従来、種分化や新種形成には何世代もの時間がかかるので数万年、数十万年の年月が必要と考えられてきました。しかし、26回の「オオシモフリエダシャクの工業暗化」の事例で述べたように、集団中の遺伝的な組成が変化すること(ステップ1~3)が進化の核心部分と捉えれば、進化は数十年単位でも起こりえます。
グラント夫妻がガラパゴス諸島のダーウィンフィンチで行った研究が有名です。ガラパゴス諸島ではエルニーニョの年には多雨、ラニーニャの年には干ばつが起こります。干ばつの年にはフィンチのエサとなる植物の成長が悪く、固くて大きな種子しか利用できません。そのため、固く大きな種子を利用できる大きめの嘴をもつ個体が生存に有利になって自然選択が働き、干ばつの前後で集団の平均的な嘴の大きさを比較すると、干ばつ後の集団で明らかに嘴の大きさが大きくなっていました。このように環境の変化に応じた自然選択が働き、集団中の遺伝的な組成が変化する現象はまさに進化です。
世代交代の早い細菌類ではもっと早く進化は起こります。近年問題になっている抗生物質の効かない薬剤耐性菌の出現も病原菌が進化した結果です。
以上の例は種の分化まで至らない例ですが、比較的短期間に新種が分化したらしい事例も報告されています。北米のリンゴミバエはもともと在来種のサンザシにのみ産卵していました。しかし、1600年代にリンゴの木が導入されると、一部の個体がリンゴに産卵するようになり、1800年代中ごろにはリンゴ農家が問題視するようになりました。このミバエは生まれた種類の果実の上で交配相手を見つける傾向があるので、現在ではサンザシとリンゴを利用する二つのグループに分かれ、異なる遺伝子組成を持つようになっているとのことです(両者の間で生殖的隔離が生じていれば種分化が起こったことになりますが、そこまでは未確認)。
(初出:2020年01月24日)
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