第40回 絶滅(2)絶滅の渦
前回は、個体数を減少させ、種を絶滅に導く要因を上げました(生物的、環境的、人為的要因)。今回は、いったん個体数が減少した集団は個体数の多い集団より絶滅しやすくなるという「絶滅の渦」について考えてみましょう。小集団を絶滅に導く要因としては、次のようなものが上げられます。
(A)個体数に関わる要因:①個体数のゆらぎ:個体数の偶然のゆらぎによる絶滅。例えば、生まれた次世代がたまたま雄ばかりであったら子孫は続きません。②環境のゆらぎ:環境の不規則な変動による絶滅。例えば、小集団だと旱魃で最後の個体群が全滅してしまうこともありえます。
(B)遺伝子に関わる要因:①遺伝的浮動:小集団では遺伝子頻度(ある特定の遺伝子が集団の中で出現する頻度)が偶然により変動し、集団の遺伝的な多様性が減少しやすい。例えば、三つの血液型の遺伝子(A、B、O型)のうち、偶然、次世代にB型の遺伝子が伝わらないと、その集団はA型かO型しかいなくなります。②近交弱勢:近親交配が起こりやすくなり、有害な遺伝子がホモの状態となって表に現われやすくなります。その結果、生存率が低くなり、一層絶滅に近づくのです。
このように、いったん個体数が小さくなると、複数の要因が複合的に働いて急速に絶滅の道に引きずり込まれることを「絶滅の渦」に巻き込まれるといいます。今年の8月下旬に小笠原の固有蝶オガサワラシジミが絶滅したかもしれないというニュースが流れました。近年では母島でごくわずかしか見られないために、東京の多摩動物公園と新宿御苑で域外飼育(人工繁殖)を行っていざという時のために個体群を維持していたのですが、最近になって急に正常な子供が生まれなくなり、とうとう飼育個体群は全滅してしまったのです。原因は突き止められてはいませんが、近交弱勢が生じたのではないかと推定されています。現地においても昨年秋の台風による攪乱の影響などもあり、この1年間目撃が途絶えています。まさに「絶滅の渦」に飲み込まれてしまった可能性が高い状況なのです。
(初出:2021年1月22日)
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