第50回 外来種問題(3)小笠原の外来種の移り変わり(前半)
筆者が小笠原で調査を始めた1970年代半ばに小笠原で脅威とされていた外来種は、植物ではギンネム、アカギ、リュウキュウマツ、動物ではノヤギ、アフリカマイマイ、ミカンコミバエ、オオヒキガエル、グリーンアノールが主な種類でした。
ギンネムは返還直後の調査で、戦前の集落跡がギンネム林に飲み込まれていたことから脅威とされたのですが、その後、裸地以外にはあまり広がらないことがわかりました。ただし、一度純林を形成すると他種を寄せ付けず、再生力が高いので根絶が難しい面があります。
アカギは母島の桑ノ木山で繁殖力のすさまじさを見せており、広がるのが危惧されていましたが、当時はまだ分布が限られていました。
リュウキュウマツは戦前の畑跡に広大な二次林を形成していましたが、1980年代初めに内地からマツノザイセンチュウが侵入して松枯れを起こし、大幅に個体数を減らしました。
ノヤギは聟島列島や南島での植生破壊がすさまじく、植生への最大の脅威とされ早急な排除が望まれていましたが、2000年前後より無人島のノヤギの排除事業が始まり、現在は父島に残るのみとなっています。
当時、集落周辺でも大量に見られたアフリカマイマイは、農作物への被害が著しく一部では在来植物への食害もありましたが、1980年代末に個体数が激減し(ノミバエの寄生ともいわれるが原因は不明)、現在は昔ほどでなくなっています。
ミカンコミバエは柑橘類を食害するため、果樹の小笠原から本土への持ち出しが禁止されていましたが、東京都の事業で放射線照射によって不妊化した雄の野外への大量散布により、1985年に根絶が達成されました。
オオヒキガエルは在来昆虫の捕食が心配されていましたが、とくに対策も取られず現在に至っており、車に挽かれた死体が干からびて煎餅のようになっているのを今でも時々目にします。
グリーンアノールはまだ分布が父島の大村近辺にとどまり、固有昆虫への食害は意識されておらず、固有種オガサワラトカゲとの競合の方が心配されていました。当時も父島では固有ハナバチ類(重要な訪花昆虫)の衰退が認識されていましたが、グリーンアノールの捕食ではなく外来のセイヨウミツバチとの競合関係が懸念されていました(既に父島ではセイヨウミツバチが重要な訪花昆虫として働いていた)。
最後に、イエシロアリのスウォームを紹介しておきます。毎年、梅雨明けの頃、夕方から夜半にかけて大量の羽アリが乱舞し、電柱の明かりの下にはオオヒキガエルが輪を描いて集まり、落ちてくる羽アリを食べる姿が見られました。(次回、後半に続く。)
(初出:2021年10月22日)
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