第47回 絶滅(9)減少の原因(近年)
今回は希少種衰退の直近の原因について考察します。
戦前(1907-1943年)と最近40年(1976-2016年)の父島の年降水量を比較すると、前者の平均は1609mm、後者の平均は1270mmであり、20%も減少していることが分かります。さらに戦前には一度もなかった厳しい旱魃が1980,1990,2016年と3回も発生しました。これが地球温暖化と関係しているのかは不明ですが、最近になって急速に乾燥の度合いが高まったことは間違いありません。私は、この近年の気候の乾燥化が、もともと乾燥に弱い希少種の一層の減少を引き起こした最大の原因だと推定しています。
他の要因としては、ノヤギ(外来種)の食害、クマネズミ(外来種)による種子や実生の食害(更新阻害)、固有訪花昆虫の衰退(外来種セイヨウミツバチが代わって受粉を担っている)などが挙げられますが、いずれも副次的なものだと思います。
現在、ムニンツツジやムニンノボタンなどの人工苗を現地へ植え戻す取り組みがなされていますが、苗が育って花・実をつけるところまでいっても、次世代となる実生がなかなか定着してくれません。おそらく種子の発芽や実生の初期成長に必要な湿潤な環境(雲霧帯的環境)が、現在の小笠原では失われてしまっているのではないでしょうか。
人間の力で気候を変えることはできないので、このまま座して希少種が絶滅するのを見守るのか、あるいは人工施設で種の保存をはかるのか(あわよくば、将来好適な気候が戻ってきた時に現地に戻すことができるかもしれない)、小笠原の絶滅危惧種の保全は難しい問題に直面しています。
(初出:2021年7月9日)
« 第46回 絶滅(8)減少の原因(背景) | トップページ | 第48回 外来種問題(1)外来種とは »



コメント