第49回 外来種問題(2)定着のモデルと駆除の順番
外来種が野生化に成功する場合を一般化すると、次のようなプロセスとなります。
①潜伏期:侵入してしばらくは個体数も少なく、分布地も限られている。目立たないが着実に個体数を増加させる。
②増大期:個体数が爆発的(指数関数的)に増加する。同時に分布も急速に拡大し、目立つ存在となる。
③収束期:個体数が増えると捕食者(天敵)、寄生者、病原菌などが外来種を利用するようになり、個体数の増加を抑制するように働く(密度効果)。そこで勢いが弱まってくる。
④安定期:分布は広がるところまで広がり、個体数は増減を繰り返しながらも一定の値に収まる。在来種との関係が構築されて、生態系の中で一定のニッチを獲得する。
こうしたプロセスを踏まえると、外来種の侵入を防ぐには、検疫体制を厳重にして持ち込まないこと、野生化させないことが最重要となりますが、万一、野生化してしまった場合には、できるだけ早く発見して、①の段階で根絶することが望ましいといえます。②の段階以降に達してから根絶するのは大変な作業となります。
また、④の状態になってしまうと、外来種に依存する在来種(例えば外来種をエサとして利用する希少種など)も出てくるため、外来種を除くと在来種にも深刻な影響が出る恐れがあります。例えば、小笠原の固有鳥オガサワラノスリが外来種のクマネズミをエサとして利用しているため、クマネズミを駆除すると一時的にノスリのエサがなくなって個体数が減ってしまう恐れがあります。
また、複数の外来種が関係する場合には、駆除の順番にも注意しなければなりません。小笠原の弟島には人間の持ち込んだノブタが生息していて、外来種のウシガエルを捕食していました。ウシガエルは固有の昆虫を食べるので、ノブタもウシガエルも根絶する必要があるのですが、この場合、ウシガエルを根絶してからノブタを駆除するのが正しい順番です。先にノブタを駆除すると捕食圧から逃れたウシガエルが大繁殖してしまう可能性があるからです。弟島では実際にウシガエル、ノブタの順番に駆除がなされ、現在はノブタもウシガエルもいない島となっています。
余談ですが、外来種と検疫の問題は、病原菌の拡散防止の問題とも共通するところがあります。ガラパゴスでは今般の新型コロナ対策において、従来外来種の侵入を阻止する役割を担っていた部署が活躍したとのことです。
(初出:2021年9月24日)
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