第43回 絶滅(5):小笠原での絶滅要因
小笠原群島(火山列島を除く小笠原)には310種ほどの在来植物があり、そのうちの46%が固有種です。このうち、環境省のレッドリストに掲載されている絶滅危惧種が、全体の約40%、固有種に限ると約70%を占めています。小笠原の植物はなぜこんなにも危機的な状況にあるのでしょう。危機に陥った原因を整理すると次のようになります。
①長期的な気候変動による生育環境の劣化:乾性低木林の希少種群(次回に詳しく取り上げます)、
②有用樹種の伐採:固有種オガサワラグワは巨木の材が珍重されて戦前にほとんど刈りつくされてしまった、
③生育地の開墾・破壊:土壌の発達した場所に成立していた湿性高木林は戦前にほとんど開墾されサトウキビ畑に変えられたので、セキモンノキやオオヤマイチジクなど湿性高木林の低木種が激減した、
④盗掘:ラン科の固有種アサヒエビネやオガサワラシコウランは返還後の一時期マニアに盗掘されて激減した、
⑤異常気象(旱魃、台風):1980年の旱魃時には希少種コバノトベラやウチダシクロキの残存個体が枯死し、1983年の大型台風ではムニンツツジの最後の個体群が打撃を受けた、
⑥病害虫による被害:1980年代にオオシラホシアシブトクチバという蛾が大発生してアカテツ科のアカテツ(広域分布種)とムニンノキ(固有種)を食害で枯死させた(外来種のリュウキュウマツも1980年代の本土からのマツノザイセンチュウの侵入で一斉に枯死した)、
⑦野生化家畜による食害:野生化したノヤギが岩場のオオハマギキョウ、コヘラナレン、ウラジロコムラサキなどを食害した、
⑧外来動物による食害:外来種のアフリカマイマイはヘラナレンの葉やセキモンノキの樹皮を食害して枯らした、クマネズミは希少種の種子や稚樹を食害して更新を妨げている、
⑨外来植物との競合:外来種のアカギは残存する湿性高木林に侵入してアカギ純林を作るので、湿性高木林の構成種(ウドノキやシマホルトノキの巨木)が減少しつつある。モクマオウは岩場に進出して大量の落葉で地表を覆うため、イネ科やカヤツリグサ科の固有種を衰退させている、
⑩訪花昆虫の衰退:長い花冠をもつムニンタツナミソウは受粉を担う昆虫が見つかっておらず、種子形成がうまくいっていない。返還後に父島、母島で広がった外来種グリーンアノールは固有ハナバチ類などの訪花昆虫を捕食することで植物にも影響を与えている。父島では固有ハナバチ類に代わって外来種セイヨウミツバチが受粉を担っている、
⑪外来種との交雑:戦前に養蚕のために持ち込まれた外来種シマグワと固有種のオガサワラクワとの間に交雑が生じて、純粋なオガサワラグワの実生ができなくなっている。以上のように、小笠原では固有植物を減少させる様々な要因が働いて、多数の絶滅危惧種を生みだしているといえる。
(初出:2021年4月2日)
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