第55回 外来種問題(8)兄島のアノール駆除の取り組み1
父島の北隣りに位置する兄島(無人島)は、全域にほぼ原生的な乾性低木林が残る小笠原でも唯一の島です。乾性な環境が農業には適さなかったとみえ、戦前にも本格的な定住や開拓がなされませんでした。そのため、父島では消失したと思われる固有の陸産貝類や昆虫類が兄島ではほぼ健全な状態で残存しています。1990年代には一度空港建設予定地となりましたが反対の声が大きくなって断念され、2011年の世界自然遺産登録においては、乾性低木林の生態系が丸ごと残る貴重な場所として遺産価値の中核に位置づけられました。
2013年、その兄島にグリーンアノールが侵入していることが報告されました。最初に見つかったのは父島に近い兄島南西部の海岸斜面でした。しかし、直後の調査で、すでに乾性低木林の広がる台地上にもかなりの密度で生息していることがわかりました。その分布状況から最初の侵入からはすでに数年がたっていると推定されました。
では、いったいどうやって父島から兄島に渡ってきたのでしょうか。3つの可能性が指摘されました。一つ目は流木などに乗って父島と兄島を隔てる瀬戸(幅500m)を乗り越えてきたというもの、二つ目は兄島の海岸に接近または上陸するエコツアーの船に運ばれた、あるいは外来種駆除などで上陸する作業者のリュックなどに紛れ込んでいたなど人間が運んだというもの、三つ目はオガサワラノスリが父島で捕まえたグリーンアノールを咥えて兄島の巣に運んだ後に逃げ出したというものです。いずれも可能性はあり、どれかに絞ることはできません。
2013年にグリーンアノール侵入の知らせが届くと、科学委員会(小笠原の世界自然遺産登録時に設置された研究者の集まりで、世界自然遺産の維持・管理について専門的な立場から管理者である行政機関に助言する組織)は直ちに「非常事態宣言」を発表し、グリーンアノールの兄島からの根絶に向けて全力で取り組むよう行政機関に要請しました。これを受けて、兄島におけるグリーンアノール駆除の取り組みが始まりました。次回は具体的な取り組みの内容を紹介します。
(初出:2022年3月25日)
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