第56回 外来種問題(9)兄島のアノール駆除の取り組み2
兄島は面積785ha、標高253mの菱形をした無人島で、大きく北部、中央部、南部に分けられます。最初にグリーンアノールが高密度で見つかったのは南部の西端でした。
まず、小笠原の環境NPO (通称IBO)が主体となって、高密度帯を囲むように防御柵(Aライン)を作り、さらなる拡大を阻止しようとしました。しかし、柵の末端の海食崖はオープンなままにせざるを得なかったこともあり、その後、柵の外側(北側)でもアノールが見つかりました。そこで、環境省が兄島の南部と中央部を分断する長大な防護柵作り(Bライン、全長3000m)に着手し、2014年にほぼ完成しました。このBラインでアノールの北上を阻止しようとしたのですが、台風で柵が壊れることもあり、防御も完璧とはいきません。その後、Bラインを突破した個体が散発的に見られるようになりました。
そこで、さらに先手を打つ意味で、中央部と北部を分ける防護柵(Cライン、全長2360m)を東京都が分担して作ることになり、2018年に完成しました。ところが、そうこうしている間に、Bライン以南ではアノールの密度が増加し分布も拡大してきて、2018年にはアノールの増えた地域で昆虫への影響の指標として注目していたヒメカタゾウムシ(飛べないのでアノールの食害を受けやすい)が激減するという現象が報告されました。危惧されていた固有昆虫へ影響が顕在化してきたわけです。
一方、兄島の中央部(BラインとCラインの間)は地形が険しく上陸地点からも遠いため、調査が行き届いていませんでした。Bラインを突破する個体が見られるようになったため、2021年に中央部の全面的な調査を行ったところ、中央部の北東部の奥まったところに飛び地状にアノールの高密度帯が見つかりました。やはりBラインはすでに突破され、奥の方で知らないうちにアノールが増殖していたのです。さらにCラインに近い場所でも単発的な発見があり、Cラインも危うい状況となっています。これが現状です。ノスリだけでなくイソヒヨドリなどもアノールをエサとして運ぶ可能性があり、やはり防護柵では防ぎきれない部分があるようです。
以上のように、広い範囲を面的に防御することは難しい局面を迎え、現在は貴重種の残る部分のみを小面積で囲んで守る「囲い柵」方式を模索しているところです。侵入発見から8年間の取り組みは、アノールの分布拡大と昆虫への悪影響を「遅らせた」という意味で決して無駄ではありませんでした。しかし、現状の駆除手法では形勢逆転は望めません。次回は駆除手法についてお話します。
(初出:2022年4月22日)
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