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2023年12月15日 (金)

第64回 植生遷移(2)

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武蔵野の森


 陽樹林(陽樹中心)から陰樹林(陰樹中心)への移り変わりの段階を途中相といいました。陰生植物は、最終的に組成・構造のほぼ一定した極相(クライマックス)の植生(森林の場合は極相林)を作って安定します。世界の植生を11タイプに分ける植生帯(バイオーム)は、大きな気候条件に対応した極相の植生です(極相は必ずしも森林になるとは限らない)。また、極相を構成する植物を極相種(クライマックス種)といいます。

 陽樹に対して陰樹は、暗い条件下でもある程度生育が可能ですが、一般に成長は遅く、ゆっくりと成熟段階に達し、親木のまわりに大きめの種子を重力散布や動物散布により散布するものが多い特徴があります。さらに、個体としての寿命は一般に長めです。本州ではシイ・カシ(ブナ科)やタブ(クスノキ科)の仲間などが典型的な陰樹です。

 陰樹の稚樹は暗い林床で枝を横に広げて少ない光を有効に使い、上層が開けるのを待っています。この状態の稚樹を前生稚樹と呼びます。前生稚樹は親木の枯死・倒木により上層が開けると、上方に急成長してその隙間(ギャップ)を埋めます。ギャップをもたらすような現象(台風による倒木、病害虫による枯死、山火事、森林伐採など)を攪乱現象と呼び、攪乱が生じて林冠ギャップができ、前生稚樹がギャップを埋めることで世代交代が進むことをギャップ更新と呼びます。

 多くの極相林ではギャップ更新により安定した陰樹林が維持されていきます。このように時間軸に沿った植生の変化を植生遷移と呼ぶのですが、これはある地域の一定の環境条件の範囲内で、数百年~1000年の時間スケールで、植物の種間の競争が主な原動力となって起こる現象であるといえます。数千年以上の時間スケールになると環境自身が大きく変わってしまう(たとえば氷河期と間氷期の交代など)ので、極相自体の内容も変化してしまい、植生遷移の概念の範囲をこえてしまいます。

 また、植生遷移といいますが、実際は植物の変化だけでなく各段階に対応した動物の変化も含まれており、本来は地上、地下のあらゆる生物を含む「生態系全体が時間ととともに移り変わる現象」としてとらえるべきものといえます。植生遷移は自然に備わった法則なので、植生遷移の仕組みをよく理解しておくと、森林の来し方、行く末を考える上で大いに役立ちます。

(初出2022年12月9日)

 

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