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2023年12月 1日 (金)

第60回 外来種問題(13)イチジク属とイチジクコバチの関係

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ガジュマルに覆いつくされようとしている場所(母島、乳房山の登山道にて)


 クワ科イチジク属にはガジュマルやアコウといった熱帯・亜熱帯域で「絞め殺し植物」と呼ばれる種類が含まれます。これらの種子が鳥に運ばれて大木(別の種類)の樹冠上で発芽すると、徐々に気根をたらしながら着生状態のまま成長します。気根が地面に達すると成長が加速され、最後は元の大木を覆いつくして枯らしてしまい、その場所で自立した個体となります。

 イチジク属にはもう一つ面白い特徴があります。それは花粉を媒介してもらうために、イチジクコバチ(総称)という小さな寄生バチと共生関係を結んでいることです。イチジクのことを漢字で「無花果」と書きますが、イチジクではいわゆるイチジクの「実」(食べる部分は花柄が熟したもの)の中にある粒々の一つ一つが花に相当します。実の先端に小さな出入り口が一つあるだけですから、ふつうの昆虫は中に入れません。特定のイチジクコバチ(イチジクの種類ごとにコバチの種類も決まっている)の雌のみが進入して中の蕾に産卵します。この時、自分が生まれた別の花から脱出する際に身に付けた花粉を持ち込んで受粉を助けるのです。実の中で羽化した雌と雄は交尾をしますが、雄はそのまま死亡します。雌は新たな産卵場所を求めて飛び出していきます。受粉に成功した花は種子となり、鳥に食べられて運ばれます。

 ところで、小笠原には戦前に導入されたガジュマルが昔の集落跡に巨大な樹冠を形成しています。また、現在の集落でもガジュマルの木陰は村民の憩いの場になっています。ガジュマルには毎年大量の実が成るのですが、これまで実生が育つことはありませんでした。受粉を媒介するガジュマルコバチがいなかったためです。ところが、1990年代にガジュマルコバチが小笠原に侵入し、その後ガジュマルに稔性のある種子が生産されるようになりました。そのため、現在は父島、母島、その他の属島でも、ガジュマルの稚樹が在来種の樹冠に取り付いて成長しているのを見かけるようになりました。

 冒頭で述べたようにガジュマルは「絞め殺し植物」の性質を持っていますので、これが広がって在来種を枯らしてしまうことが心配されます。他の外来樹木と違ってガジュマルは高い木の樹冠の上で芽生えるので、小さいうちに見つけるのは困難です。今後の動向に注視する必要があります。

 ところで小笠原には固有種のイチジク属(イヌビワの仲間で絞め殺しの性質はない)が3種あり、それぞれ相棒のコバチと共生関係を結んでいます。植物の種分化とコバチの種分化がどのように対応してきたのか、生物進化の興味深い研究材料を提供してくれています。

(初出:2022年8月19日)

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