第65回 植生遷移(3)自己循環遷移
連載第33回でガラパゴスのスカレシア林を取り上げた際に、海洋島に特徴的な自己循環遷移についても触れました。ここではハワイの事例で再度この問題を紹介したいと思います。
ハワイは太平洋のど真ん中に孤立した島であるので(一番近い北米大陸からでさえ4000Kmも離れている)、植物は容易に渡ってくることができず、全体としてハワイに到着した植物の種数は非常に少ないのが特徴です(実際は1つの祖先がハワイの中で種分化して大きなグループを作っている場合があるので総種数は約1000種ある)。とりわけ大陸で極相林を作る陰樹はもともと長距離散布に向かないので、島に到着する可能性が低い。そこでハワイの植物相は大陸で極相林を作っている陰樹が欠けた独特の内容となっています。
ハワイの雲霧帯の森林で一番優占しているのは、ハワイ語でオヒアと呼ばれるハワイフトモモです。オヒアは発芽や初期成長に十分な光を必要とする陽樹であり、新しい溶岩原のような裸地ができると真っ先に進出してきます。進出したオヒアは成長してオヒア林(陽樹林=途中相)を形成しますが、極相をつくる陰樹が不在のためにオヒアに取って代わるものがありません。一方、オヒアは裸地に一斉に芽生えるので樹齢も比較的そろっており、ほぼ一斉に寿命を迎えます。このような活力が失われてきたときに旱魃などの異常気象や病害虫の攻撃などを受けると、オヒアの親木が一斉に枯死してしまうのです。
陽樹のオヒアの実生や稚樹は暗い林冠下では育ちませんが、親木が一斉に枯れて林内が明るくなると一斉に発芽してまたオヒア林を作っていくことになります。そこで、ハワイではいつまでたっても陰樹からなる本来の極相には達せず、途中で振り出しに戻って途中相のオヒア林が続くことになるのです。
このような自己循環遷移で回っている海洋島の生態系に、人間が陰樹の外来種を持ち込むとどうなるかは容易に想像がつきます。途中相で止まっていた遷移が動き出し、陽樹の在来種を駆逐して陰樹の外来種による極相林に置き換わってしまうのです。ガラパゴスではシンチョナやグアバ、ハワイではミコニアやファイアーツリー、小笠原ではアカギやキバンジロウなどがその例です。
(初出:2023年1月13日)
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