第63回 植生遷移(1)
本連載も60回を超えました。第4回に島症候群ということで海洋島の生物や生態系に特徴的な現象16項目を列挙し、順不同で取り上げてきました。まだ残っている項目がいくつかありますので、もう少し連載を続けたいと思います。
今回は「植生遷移が単純である」という項目です。まず、植生遷移のおさらいから始めましょう。
裸地(植被のない裸の土地)に植物が進出し、次第に種類が交代して最終的に一定の組成・構造をもつ安定な植物群落に至る一連の過程を植生遷移(サクセッション)といいます。実際の植生遷移は土地の条件に応じてプロセスにバリエーションがありますが、モデル的な推移は次の通りです。
まず、遷移の全過程を大きく3つの段階(相):①初期相(先駆相)、②途中相、③極相に分けます。
遷移の出発点である裸地は、一般に乾燥、強光、貧栄養などの不安定で厳しい環境条件であるので、こうした環境に耐えられる種類の植物がまず進出します。これらの植物をパイオニア植物(先駆植物)とよび、発芽や初期成長に十分な光を必要とする陽生植物(樹木では陽樹)がこれにあたります。
陽樹は一般に成長が速く、短期間のうちに成熟段階に達し、小型の種子を大量につけ、風散布または鳥散布により遠方まで散布される、ただし、概して個体の寿命は短いという特徴があります。また、土の中で長い年月の間、種子が休眠状態のままで生き続け(これを埋土種子という)、上層が開けて地表が明るくなると発芽する能力をもつものが多く知られています。陽樹は裸地ができるといち早く進入し、森林が安定してくると陰樹に取って代わられるので、世代ごとに裸地を求めてさまよう生き方をしているといえます。本州ではアカマツ、アカメガシワ、カラスザンショウ、クサギ、ヌルデなどが典型的な陽樹です。
裸地から草地、陽樹林へと移り変わっていく中で、風化した岩石と落葉などの有機物が混じり合い、土壌動物の働きとあいまって土壌層が発達していきます。このような生物による環境への働きかけは環境形成作用と呼ばれます。
一方、陽樹林が成立して暗くなった林内では、陽生植物の新しい芽生えや稚樹は育たず、次世代を残すことができません。かわって、林床には暗い条件でもある程度発芽、成長ができる陰生植物(樹木では陰樹)が出現し、徐々に種類が置き変わっていきます。このような陽樹林から陰樹林への移り変わりの段階が途中相にあたります。後半の説明は次回に。
(初出:2022年11月11日)
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