第67回 単純な食物連鎖
生態系における食う食われる関係を食物連鎖と言います。食物連鎖は光合成をおこなう植物(広義)から始まり、植物を食べる食植者、食植者を食べる肉食者(第1次、2次・・・)と続き、最後に頂点に位置する肉食者(頂点捕食者)で終わる一連の連鎖です。
海洋島の生物相は総種数が少ない、また、内容に偏りがあることから、海洋島では食物連鎖の鎖の数が少なく全体に単純なものとなっています。そして、最大の特徴は、強力な草食動物(ヤギ、シカ、ウサギなど)や肉食者・雑食者(ヤマネコ、オオカミ、クマ、イノシシ、タヌキ、ヘビなど)が欠けていることです。そのため通常は5段階ほどある栄養段階(階層)の数も少なく、すぐに頂点捕食者(多くの海洋島では猛禽類)に達してしまいます。
小笠原にはもともとオガサワラオオコウモリ(哺乳類)とオガサワラトカゲ(爬虫類)の2種しか陸生の脊椎動物がいなかったので、本来は鳥類と昆虫、陸産貝類などの無脊椎動物が中心の生態系でした。そのため、小笠原の食物連鎖の頂点に位置するのは猛禽類のオガサワラノスリであると考えられます。
ガラパゴスにおいても哺乳類の草食や肉食獣は欠けていますが、他の海洋島と異なるのは、大量のガラパゴスゾウガメが草食獣のニッチを占め、あたかもウシやウマのように草を食べていたことが挙げられます。また、ウミイグアナは海に進出して海藻を食べ、リクイグアナは乾燥地のサボテンを食べるなど、独自の食物連鎖も編み出されました。さらに、ガラパゴスには、海洋島では例外的に4種の固有ヘビが捕食者の地位を占めており、バッタ、ヨウガントカゲ、コメネズミ、ウミイグアナの赤ちゃん、鳥類の卵やヒナなどを食べています。しかし、そのヘビをも食べるガラパゴスノスリやガラパゴスコミミズクなどの猛禽類が、ガラパゴスでも食物連鎖の頂点に位置すると考えられます。
もともと強力な草食動物や捕食者を欠く海洋島に人間が外部からそうした生物を持ち込むとどうなるかは、本連載の外来種問題のところで具体的な事例を多数紹介した通りです。
(初出:2023年3月10日)
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