第73回 エコツーリズム(最終回)
この連載もいよいよ最終回を迎えました。最後に海洋島におけるエコツーリズムについて取り上げます。
これまでお話ししてきたように、海洋島は、生物進化を始め、さまざまな現象(島症候群)がわかりやすい形で見られるので、エコツーリズムの実践場所としてとても適しています。中でもガラパゴスは、海洋島では例外的に各種の海鳥やゾウガメ、イグアナなど大型の動物が間近に観察できることで、1978年にはユネスコ世界自然遺産の第1号に登録され、本格的なエコツーリズム発祥の地となりました。ダーウィンによる進化論発想の島として研究者に注目されていたこともあり、最初から様々なルールに基づく自然に配慮した観光が実現したわけです。
しかし、その後の歩みは決して平たんではありませんでした。初めの頃は、住民の生業(農業や漁業)と自然保護との軋轢がありました(ナマコ猟の規制で漁民が反発するなど)。観光客が増えてくるとゴミ処理などの問題も顕在化してきました。また人や物資の往来とともに外来種が侵入して生態系に悪影響を及ぼすようにもなりました。そこで、一時は世界遺産の危機遺産に指定される事態となりましたが、エクアドル政府が本腰で自然保護に取り組む姿勢を打ち出したことで危機からは脱しました。
また、最近はソシオエコロジー(社会生態学)の考えが主流となってきています。そもそも住民の生業が成り立って、彼らの理解・協力がなければ自然保護もうまくいかないことが認識されるようになったのです。アグロフォレストリーで農業に自然保護を組み入れたり、漁民がエコツアーの船舶輸送を担ったり、街中の植栽を在来種中心とする(ネイティブ・ガーデン・プロジェクト)などの取り組みが進んでいます。
また、小さい時からの環境教育を積極的に行ってきた結果、自然保護意識の高い若者が成長して、地元のガラパゴス社会で活躍し始めています。ただし、現在島民が3万人(新たな移住は規制されている)、観光客が年間30万人に達しており、全体のキャパシティー(環境収容力)を考えざるをえない段階に来ています。
一方、「東洋のガラパゴス」小笠原は島の面積がガラパゴスの約1.3%しかありませんが、島民が2500人、観光客が年間3万人で、ツーリズムの規模はちょうどガラパゴスの10分の1です。2013年には世界自然遺産の仲間入りを果たし、現在、ガラパゴスに倣ったエコツーリズムが行われています。2021年にはガラパゴスのダーウィン研究所と東京都が交流協定を結んで、人の行き来が始まりました。お互いの長所を学びあいながら交流を続ける中で、両島の自然が末永く残っていくことを願っています。
長い間のご愛読、ありがとうございました。
(2023年8月書き下ろし)
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